インドの沙漠で痛感した日本人のヤバい「劣化」 電気まみれの生活で日本人が失ったものとは
東洋経済オンライン / 2024年12月31日 9時30分
ひんやりとした砂や風が舞う、月や星の光がその淡い輪郭を浮かび上がらせる大地の美しさにも、心惹かれていく。ああ、僕はいったいここで、何をしているんだろう?
自分という存在の儚さと小ささだけが際立っていく。しかし、ここで感受することのできる世界の、この溢れんばかりの美しさは、いったいなんなのだろう? 僕は命令されるがままに走り続ける沙漠の中で、生きてるって、こういう感覚なのかな、と漠然と感じていた。
それでも僕の身体は、数時間の沙漠の徘徊に、あっという間に悲鳴をあげ、動物たちを射止めるその瞬間に至る以前にしゃがみ込み、彼らの動きを遠くから眺めるか、サボテンの裏で息も絶え絶えに身体を横たえてしまうのだった。なんというヘタレ。
たいてい気がつくと、狩りを終えた男たちにゆさぶり起こされ、その日の猟の成果を興奮気味で語る彼らに付き合わされることになるのだ。
「電気まみれ」の生活で僕が失ったもの
僕は思う。彼らのいう「電気まみれ」の生活や、便利さと快適さを追求した近代的生活の様式によって、僕はすっかり人間に本来備わっているあらゆる能力を低下させてしまった、と。
夜を見通す目、砂地を駆け回る筋力、自然や動物たちとの対話の力、根気強く動物たちを追い詰める気力や体力、ゆるぎない自信、そして世界とつながるためのアンテナやセンス。
僕は、失ったそれらの力を埋め合わせるように、他者の評価やテストの点や断片的な知識の量を増大させ、かりそめの尊厳をかろうじて保っているような人間だった。
そしてそれらの相対評価の獲得競争は、自然の中で生き抜く感度や能力、つまり動物を獲って食べるという、生命維持のために最も必要とされる実践知にとって、何一つ役に立たないことだった。このことは、「生きる」ということの根源的な問いを、僕に強く投げかけるのだった。
小西 公太
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