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2025年の日経平均が最高値を更新する2つの理由 「割り負けていた内需系企業の逆襲」の期待も

東洋経済オンライン / 2024年12月31日 15時0分

価格決定力を失った企業は数量・シェア確保を優先し、賃金がその犠牲となった。そうした環境で、現役世代の所得は伸び悩み、その裏でインフレに弱い(デフレに強い)高齢世代が価格決定において重要な存在となった。アベノミクス開始以降に名目GDPはようやく拡大に転じたものの、そうしたデフレ下に特有の構図に大きな変化はなく、2021年までは緩慢な伸びにとどまっていた。

しかしながら、そうした構図は2022年に崩壊し、名目GDPは急成長を始める。コロナ禍終息とインフレが相俟って2022~23年は累積7%の急成長となり、水準は2024年4~6月期に600兆円に到達した。500兆円から600兆円の大台突破には結局32年を要したが、550兆円から600兆円に至る「後半の50兆円」は、わずか3年程度で達成されている。

この間、企業は価格転嫁を進め、採算重視の姿勢に舵を切っている。たとえば日銀短観で企業の価格設定行動を確認すると、労働集約的な非製造業の販売価格判断DIはバブル期を凌駕した水準にあり、積極的に値上げに踏み切っている様子がうかがえる。

また自社製品・サービスの販売価格見通しが、日本全体の物価見通しを上回る構図も定着しつつあり、これらは企業の価格決定力が増していることを意味する。デフレの沼から抜け出した日本経済は、人口減少により数量はさほど伸びが期待できなくとも、金額では採算を満たす拡大が期待できよう。

そこでTOPIX(東証株価指数)を、安全資産(10年物国債金利)の利回りと名目GDP成長率の差をとった数字で回帰分析すると、その差(=名目GDP成長率―10年金利)が1%拡大すると株価が10%弱上昇するという関係が示される。

「経済が停滞しているのに株価上昇はおかしい」という指摘は、その「経済」の意味するところが実質GDPなのであれば、そもそもの論点に問題があるように思える。名目GDPが拡大しているという点において2022年以降の株高は、実体経済の裏付けを伴っていると言えるだろう。

「年収の壁」引き上げが追い風となる投資対象は?

株式市場では、日本以外で稼ぐ「グローバル企業」などと称される企業が長らく脚光を浴び、成長機会に乏しい内需関連企業の注目度は相対的に低かった。もっとも、物価上昇と、名目賃金の高い伸びが併存する下では、内需銘柄に期待が集まる可能性があるだろう。現時点の企業収益、消費者物価、連合の賃上げ要求方針、人手不足感(特に中小企業)から判断すると2025年も賃上げは続く公算が大きい。

また、仮に国民民主党の要求に近い形で、所得税の基礎控除などが拡大し「年収の壁」が引き上げられるのであれば、現時点で「壁」が障壁となっていないフルタイム労働者に減税の恩恵がおよび、個人消費の追い風となる。

もちろん、労働時間を調整していたパートタイム労働者が新たに得る給与収入が個人消費の源泉になることも期待できる。それによって供給制約が緩和されるのなら企業収益は拡大する。株式市場では消費関連として卸売、小売り、個人向けサービスなどが注目されよう。また不動産や建設などにも恩恵が及ぶのではないか。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

藤代 宏一:第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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