「奄美にあるハブ屋」使用禁止Xデーに向けた対策 時流読み変化続けるハブ屋のビジネス(後編)
東洋経済オンライン / 2025年1月1日 9時1分
商学系の大学を卒業した良太さんは経理を担当し、拓哉さんは武臣さんに教わりながら、ハブ皮のなめしに始まる革製品の全工程を担当するように。武臣さんは拓哉さんに革製品づくりをバトンタッチしたあと、商品の企画・小物の製作、デザイン、ウェブ製作に専念するようになった。
家業以外の仕事をしたいと思わなかったのか?
良太さんと拓哉さんは家業以外の仕事をしてみたい、せめて大学を卒業したいと思ったのではないだろうか。当時の思いを聞いた。
「家業を継ぐ・継がないということを深く考えたことはなかったです。ただ、兄が先に帰っていて、仕事量が多くて2人では手が回らないという話は聞いていましたから、帰ってきてほしいと言われても驚きはなかったですね。求められているのなら、よそで働かず、すぐに家業に入るのもいいのではないかと考えました」(次男・良太さん)
「中退するのは残念でしたけれど、経営が大変という話は聞いていたので、仕方ないなと。ハブ屋の仕事は子どものころから当たり前にあるものなので、好きとか嫌いとか考えたことはないですね。もともとモノづくりが好きなので、革製品を作るのは苦じゃない。むしろ楽しく仕事をしています」(三男・拓哉さん)
こうして原ハブ屋は父と息子3人の4人体制となった。社長はいまも父・武広さんが務めているが、経営の中心は3兄弟。3人で話し合いながら経営改善のための改革を進めている。
3兄弟が帰郷した2000年代前半は「ハブ撲滅推進協議会」が「ハブ対策推進協議会」へと名称を変え、奄美群島のハブ対策が「撲滅」から「共生」へと転換し始めた時期にあたる。その時流に呼応するかのように、原ハブ屋の3兄弟も時代に合った商品開発を考えるようになった。
ハブを知ってもらうためのコンセプト
そこで生まれたのが、新たな商品コンセプト「ハブを知り、理解してもらうためのきっかけづくり」である。なぜこのようなコンセプトにしたのだろうか。
「商品のためにハブを殺すことは一切ない、とお客さんに伝えるためです。環境保護や動物愛護の潮流は日本にいても無視できないほど大きくなっています。お客さんから聞かれたときに、そこにしっかり答えられる商品づくりをしようと考えました」(長男・武臣さん)
武臣さんによると、原ハブ屋の商品を見て「財布を作るためにハブを殺しているの?」とお客さんから質問されることがあるという。
だが、商品のためにハブをわざわざ捕りにいくこともあったのは祖父や父の時代まで。現在、原ハブ屋が商品の原料とするのは、すべて自治体の買い上げ事業で住民が持ち込んだ駆除ハブだ。
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