「奄美にあるハブ屋」使用禁止Xデーに向けた対策 時流読み変化続けるハブ屋のビジネス(後編)
東洋経済オンライン / 2025年1月1日 9時1分
また、原ハブ屋のオリジナル商品ではありませんが、百均ぐらいの価格設定のおもちゃや雑貨を置く『原商店』というコーナーも始めました。せっかく奄美に来たのだから、できるだけ多くのお客さんに楽しんでほしいと思っています」(長男・武臣さん)
原価割れの問題も解決
かつて親子げんかの種になった商品の原価割れの問題も解決した。武臣さんがExcelで自作したシステムでかんたんに原価計算ができるようになったのだ。
「この商品って儲かってるの? 儲かってないの? と不安を抱きながら商品をつくるのは正直ストレスでした。でも、原価計算システムで作る前にシミュレーションができるから、安心して商品開発にチャレンジできるようになった。商品開発のスピードが上がり、商品の幅も広がりました」(長男・武臣さん)
3兄弟が次々に店の改革をしていることを父・武広さんはどう思っているのだろうか。
「息子たちからは『なんで原価割れなの?』『こんなに借金して』と言われてけんかになったこともありました。でも指摘は全部当たっているし、3対1で負けてしまうから、最近は言うことを聞いています。おかげで、新店舗をつくるための借金も返し終わりました。息子たちはそれぞれ家族を養っていかないといけませんから、いろいろ考えてやっているみたいです」(2代目・武広さん)
武臣さんは、家業を手伝い始めた当時をこう振り返ってくれた。
「帰ってきたころの経営状態は思い出したくもないくらいですが、父ちゃんは1人で店をやっていて本当に大変だったと思います。自分たちは兄弟3人で話し合いができるから恵まれている。僕がどんどん企画を出すタイプなので、特に次男の良太には『“野党”になってほしい。絶対に穴があるから気づいたら言って』と頼んでいます」(長男・武臣さん)
なぜハブ屋を続けるのか
武臣さんによると、ハブを扱う商売柄、お客さんから「怖い」「気持ち悪い」と言われることもあるという。それでもこの家業を続けるのは家族が好きだから、そしてハブが面白いからだ、と話してくれた。
「僕は映画でも講演でも、要はどういうこと? と考えて自分なりの答えを出すのが好きなんです。聞いたことは自分の血肉にしないともったいないという気持ちもあるのかな。原ハブ屋の仕事もそれと同じ感覚でやっています。ハブって調べ始めると深くていまだにわからないことも多い。ハブって何だろう? と考えて、僕なりの答えを凝縮して商品に落とし込む。そうして、これからもハブとうまく共生していきたいと思っています」(長男・武臣さん)
前編:「奄美にあるハブ屋」が3世代に渡って続く背景
横山 瑠美:ライター・ブックライター
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