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92歳女性が「老人ホーム入居の夢」をあきらめた訳 老いの現実を知り、上手に付き合うためのコツ

東洋経済オンライン / 2025年1月2日 7時0分

調べてもらったら、「この家は丈夫にできているけれど、今度、大地震がきたらそのまま倒れて、隣の家を押しつぶしてしまうかも」とのこと。見渡せば、亡くなった連れ合いと私の蔵書が山積みになっていて、床の一部が抜けているし、確かに危険です。

こうして、84歳にして、家を建て替えることになりました。

それまでは、家は古いままにしておき、近くにある、食事のおいしい有料老人ホームに入ろうと思っていました。これまで一生懸命に働いてきたので、少しはぜいたくをしてもいいかなと。

でも、ホームの個室は狭いので、時々広々とした家に帰り、のんびりする。そんな暮らしを夢に描いていたのですが……。

蓄えていた老人ホームの入居金は建築費用に消え、ホーム暮らしの夢も泡となって消えました。体の老化と家の老朽化は、同時にやってくるものなのですね。

新しい家には、2階への階段をのぼれなくなったときに備えて、エレベーターをつけました。でも、いっさい使っていませんでした。エレベーターを使うほどでもないと、高をくくっていたのです。

ところが、88歳の夏にこのエレベーターに助けられることに。階段から転落して全身を打撲し、階段ののぼりおりが困難になったのです。幸い、どこにも傷はなく、よくぞ頭や顔をぶつけなかったものだと、みんなに感心されました。

高齢になると転びやすくなるのは仕方のないことです。けれど、もし1人暮らしだとしたら、危険性が高まります。家のなかで転んだとき、誰にも助けてもらえず、発見も遅れるのがその理由です。

浴槽でおぼれたりしたときも同じく、人に助けを求めたり、自分で救急車を呼んだりしづらくなります。取り返しがつかないことにならないために、何か施策を考えねばなりません。

消費者庁の資料にある「65歳以上の不慮の事故による死因別死亡数」[注1]によると、2021年の「交通事故」による死者数は2150人。「溺死・溺水」によるものが6458人(約8割が浴槽内)で、交通事故の3倍程度です。

不慮の事故による死因は、「溺死・溺水」「不慮の窒息」「転倒・転落・墜落」の順に多くなっていきます。家のなかで起こる事故がほとんどなのです。

できるだけ長く自宅で暮らすには、いざというときの助けをどこに求めるか決めておくこと。終の住みかを有料老人ホームにするのであれば、その資金はどう調達するのか。体が動くうちに老いの現実と向き合い、考えておく必要があります。

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