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92歳女性が「老人ホーム入居の夢」をあきらめた訳 老いの現実を知り、上手に付き合うためのコツ

東洋経済オンライン / 2025年1月2日 7時0分

注1:消費者庁リーフレット「無理せず対策 高齢者の不慮の事故」2022

後期高齢者の仲間入りで湧いてくる億劫の虫

老いの覚悟の1つは、「億劫」という気持ちに負けないこと。ある年配の女優さんが「年をとったらすべてが億劫さとの闘いである」とおっしゃいましたが、その通りです。

食卓を整えるのも、お風呂に入ることさえも、なかなか行動に移す気になりません。体を動かさないと次に進めないので、「エイッ!」と気合いを入れて、無理やり自分を鼓舞している状態です。

億劫は「老っ苦う(おっくう)」。これを老っ苦うといわずして何と呼べばいいのでしょう。まさに、老いの苦しみとの闘いです。

友だちに会いに行くのも、以前はあんなに楽しみにしていたのに、いまは雨でも降ろうものなら、出かけるのが億劫でやめてしまうありさま。家で寝っ転がって、テレビでもみていたほうが楽だと思うからです。

「これではいけない」と思い直し、そのたびに、億劫を追い払っているわけですが、闘い過ぎると疲れ果て、逆に生きる気力が萎えてきます。がんばりが効かないのも、また老いなのです。

はて私は、何歳ぐらいまで億劫さを感じなかったのか?

振り返ってみると70代半ばくらいまでは、地方での講演も苦にならず、元気よく行っていました。それが「アラ傘寿(さんじゅ)」の声を聴くようになった頃から、億劫の虫が頭をもたげてきたのです。

75歳以上の人を「後期高齢者」と呼ぶのはいかがなものか、と思っていましたが、75~80歳くらいが、老いの階段を上がり始める1、2歩めであることは認めざるを得ません。

意識して人前に出て、億劫を振り払う

では、億劫に立ち向かうために、どこで気合いを入れるかというと、私の場合は仕事です。

仕事の依頼があれば、資料を読み込んだり、文章を書いたりしなければなりませんから、横になっている体を無理にでも縦にして机に向かいます。

新聞や雑誌の取材があれば、あらかじめ与えられたテーマについて、考えをまとめて、記憶違いがないか調べたりします。たまに、テレビ出演なんてこともあり、そんなときは美容院に行って身なりを整えます。緊張もしますから背筋がシャンとします。

人と会ったり、人前に出るとなれば、おのずと気合いが入るものです。

億劫になるのは、たぶん、すぐにでもやらなければならない緊急性や切迫した事情がないからだと思います。

だとしたら、意識して人と会ったり、人前に出る機会を作ったりするのはどうでしょう。

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