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電気・ガスなし築73年「廃団地」が満室の不思議 廃団地を90万円で購入して貸し出したら…

東洋経済オンライン / 2025年1月2日 8時0分

売却する側としては建物を解体し、更地にしてからの活用を想定していたのかもしれないが、団地の敷地まではそれほどの坂ではないものの、その背後は傾斜地。B棟の背後には崖があり、以遠は急な石の階段が続く。崖の上の神社は崩落しており、かつてあった参道は立ち入り禁止とされている。

そうした崖を背負った土地で建物を解体・新築しても人口減少が著しい北九州市で収支が合う可能性は非常に低い。といっても現状、廃墟に近い状態になった団地をそのまま使い続けるという判断は普通の不動産会社、不動産オーナーにはなかなかできることではない。

だが、世の中にはそういうことができる”変態”(無茶苦茶ほめている)が確実にいる。同年6月に行われた2回目の入札にただ1人参加し、この団地を残そうと購入した吉浦隆紀さんはそうした1人だ。

吉浦さんは福岡市城南区樋井川にある自社ビルを相続し、その再生を通じて空き家の活用に目覚めた。樋井川は最寄り駅から歩くと40分という公共交通利用に関しては超絶不便なエリア。そこに継承したのは現時点で築50年前後という古い賃貸マンション2棟である。

建物の古さ以上に問題だったのは、空室率が20%超という状態に加え、入居者のうちの3分の2ほどが滞納していたこと。その打開策として入居者にDIYしてもらうというやり方を取り入れた。

最初は入居者層を変えようと3部屋をリノベーション、もう1室、単にスケルトンにしただけの部屋を用意して内見会をした。リノベすれば決まるだろうと踏んだわけだが、何も手を入れていない部屋になぜか人気が集中。内見会後問い合わせがあってすぐに決まった。

一方、リノベ済みの部屋が決まったのは半年後。それほど明らかに差が出るならスケルトンの状態で貸してみようと決意。DIY資金として家賃の3年分を支給して貸すという方式を取ることにした。

家賃3年分を支給といっても電気関係、給排水管の改修、下地の床上げなどを行うとその大半が飛んでいってしまうため、最終的にはDIYで部屋を作っていくことになるが、これが人気を呼んだ。吉浦さんが自社ビルをDIY可にしたのは今よりももっとDIYがマイナーだった時代。吉浦ビルは評判を呼び、2016年以降は満室が続いている。

やり方次第では不利な物件も魅力的になる

この成功から吉浦さんはやり方次第では遠い、古いなど不利な立地でも建物、借り方、使い方に魅力があれば人は集まると確信した。だとすれば、人口減少が著しい大牟田市や北九州市をこのやり方で変えたいと考え、2年半ほど前から両市を中心に空き家を購入し、再生に取り組んでいる。

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