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電気・ガスなし築73年「廃団地」が満室の不思議 廃団地を90万円で購入して貸し出したら…

東洋経済オンライン / 2025年1月2日 8時0分

当然、旧畑田団地改め「門司港1950団地」も入居者が自分でDIYすることが基本。家賃は、最初3年間は月額1万円として2024年8月からフェイスブックなどSNSを利用して入居者を募集し始めた。

「家賃が1万円なので渋沢プロジェクトと呼んでいます。近代日本が立ち上がる時期に数多くの会社を生んだ渋沢栄一にちなみ、ここから新たに起業、創業する人たちが出てくれたら面白いだろうと考えています」と吉浦さん。

ただし、建物の躯体には問題はなさそうなものの、住戸内は3年間放置された状態。電気の点いていない、古いままの部屋は見ようによってはちょっと怖くもあり、これを全部自分でやるのかと思うとひるんでしまう人もいるだろう。

電気、水、ガスより先にWi-Fiは使えるように

それにそもそも、2024年11月半ば時点ではまだ電気、水、ガス、Wi-Fiが使える状態になっていなかった。

電気は一度1階に引き込み、そこから各戸に分配されていたようだが、団地が廃止された時点でおおもとから切断されており、再度使うためには引込から復活してもらう必要がある。水道は廃止以前に行った工事の届出が出ていなかったため、現状が把握できないとして建物全体の配管をやり直す必要があるかもしれないと言われている。

もともと風呂なしだった物件を、バルコニーを潰して浴室に改修しているため、浴室内に給湯器が置かれているのだが、現在はそのやり方はできない。換気や出火の危険などの観点から給湯器は室外に置かなくてはいけないそうで、となるとどこに置けばいいのか。

工務店に丸投げすればもっと効率的に進められるのかもしれないが、予算がないこともあり、現在は吉浦さんが1つずつ交渉に当たっている。この様子だと最初に使えるようになるのは新設することになるWi-Fiかもしれない。

そんな状況でありながら、入居者は順調に集まっており、11月半ばにはA棟の24戸は全部埋まった。緑に覆われているB棟は最初、手を付けないつもりと言っていたが、そこの借りたい人が出てきており、埋まりつつある。

人気の理由の1つは家賃の安さだ。いくら空き家が増えていると言われる今でも家賃1万円で40㎡ほどのなんでも好きにしていい空間が手に入ることはほぼない。一方、好きに使える空間があったらやってみたいことがある人はたくさんいる。

その意味では家賃や不動産価格の下落はある意味チャンスでもある。一般的には価格下落は悪いことのように捉えられているが、それにより多くの人にチャンスがめぐってくると考えると、そこから浮上していく、という地域や経済の立て直しもあるのではないか。

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