瀬戸内海の離島が「留学先」として注目のワケ 「全校生徒数が93名」の広島県立大崎海星高校
東洋経済オンライン / 2025年1月3日 14時0分
「内進点からここら辺のエリアから選ぼうねと指導を受けてる時に、何の物差しの中で生きてるんだろうなって思ってしまって。この物差しだけじゃなくて、違うもので私を測ってくれる場所があったらいいなって」
地域みらい留学の制度自体が好きになり、パンフレットを見て直感で決めたそうです。
島に来て印象的だったことは、「人」だとAさんは言います。
「例えば、こうやって高校生が地域で何かしたいなって思って入ってきたときに、一緒にやるよって言ってくださる方が本当に多い」
Kさんも応援者の存在が大きいと言います。
「地域の場を作られている、挑戦されている方たちのところに行っておしゃべりするのが日常になるので、自分はこういうこと興味あってというのを言いやすい環境」
2人にインタビューして感じたのは、応援者が多いというのは、ひょっとしたらここの生徒が臆せず発言できる1つの理由なのではないかということです。
参加してどのような変化があったのかという質問に関しては、Aさんは
「3年生になって思うのは、自分が今しんどいなって思ったら、うまく適当にできるようになった。余裕を持てるようになったという点では、めちゃめちゃ強くなったかなって思います」
親元を離れての寮生活と島親制度
地域みらい留学の生徒は、寮に滞在しながら共同生活のもと学校に通っています。大崎海星高等学校の場合は前述の教育寮「コンパス」があります。この寮は自治体の運営のもと1学年10人、3学年で約30人を収容し、ハウスマスターというお兄さんお姉さん的な大人がサポート、寮生1人につき「島親さん」がつく制度を導入しています。
ある島親の方(女性・70代)と島のカフェで対話する機会があったのですが、そのお話の中からこの島の本当の魅力が理解できた気がします。まとめると以下のような点です。
・地域の学校を応援したいというマインドがある
・生徒には安易に解答を言わず、暖かく見守るスタンス
・生徒が何かに挑戦しようとする際には、「やりなよ!」と後押しし、全面的に応援する
・地場産業が安定しているため経済的に余裕がある人が多い
特に生徒にとっては、親代わりであると同時に地域の応援団的な存在となっていて、これはある意味、海外留学におけるホストファミリー以上の存在と言えるかもしれません。特に近年は昔のようなボランティア精神を持ったホストファミリーは少なくなってきているため、島親は貴重な存在と言えるでしょう。
海外留学の場合は、完全アウェイな環境に身を置くことでコミュニケーション能力の向上や、よりタフな自分自身を作り上げる効果があります。今回の国内留学の事例では、地域の応援者が多い環境に身を置くことで失敗を恐れず一歩を踏み出すことにつながっている点が、海外留学とはまた違った効果があることがわかりました。心理的安全性の高い地方で挑戦する練習ができること、その小さな経験を積み重ねられるように大人が伴走する。地域みらい留学からはそんな大人たちの地域や次世代への思いを感じることができました。
大川 彰一:留学ソムリエ 代表取締役
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