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92歳の女性評論家が「80歳で調理定年」を勧める訳 「総菜、外食、人に頼る」の工夫3つで快適な食を

東洋経済オンライン / 2025年1月3日 10時0分

食生活改善策のなかでも効果的だったのが「トモ(友)食い作戦」です。

気の合う友に会い、一緒に食べることは楽しく、食への意欲が出ました。楽しい気持ちで食べることは、体にも心にもいい影響を与えてくれます。

少し前のものになりますが、「食育推進施策(食育白書)」[注3]に、食事をともにする頻度が高い人は孤食の多い人に比べ、食事のバランスがよく、食生活が良好な傾向との結果も出ています。

私は医師の娘と同居していますが、彼女とは生活時間帯が違うので、孤食になりがちです。そこで、週に2回、シルバー人材センターに私の食事作りをお願いしています。そして、その日に合わせて、私の助手など2~3人を誘って、一緒に食事をするようにしました。助手の食事は自分たちで調達します。

何人かで食卓を囲むと自然と食が進み、自ずと栄養もしっかり摂れるというものです。

もし、出かける元気があれば、友だちと外食を楽しむのもいいし、自宅に招いて、持ち寄りでも出前を取ってもいいので、ランチ会を開くのもいいと思います。

「同じ釜の飯を食う」ことで孤食を防ぎ、会話を通して人とのつながりができれば、体調の悪さも吹き飛ぶでしょう。

健康的な食事を取り戻し、生きるエネルギーに

昭和30年代に結婚して数年間、夫の転勤先の社宅で私が専業主婦をしていた頃のこと。

あるお宅で母親が娘に、「あなたは女だからがまんして、お兄さんと弟に(食べ物を)あげましょうね」というのを聞き、まだ家父長的な発想をする人がいるのかと、ショックを受けました。

主婦と呼ばれる女性は、高齢になるまで「食生活の中心」にいたようにみえますが、それは食事の提供者としての「中心」でした。

家族の都合によって自分の食事がおろそかになったり、お昼ご飯は残りものですませるのが習慣になっていたりと、案外、主婦自身の「食」はいい加減だったのだと思います。

健康的な食生活を取り戻すには、やはり「トモ食い作戦」で、ご飯友だちを増やすのが有効です。家でご飯を食べられない子どものために「子ども食堂」があるように、1人暮らしの高齢者のためにも、もっと気楽な「じじばばカフェ」があればいいなと思っています。

1つの小学校区に一か所ずつくらい、高齢者が集まって、食べたり話したりできるような場所を作れば、そこが人との出会いの場にもなります。もしかしたら、散歩や趣味の仲間もできて、孤独感が薄れるかもしれません。

食をともにする機会が増えることは、人とのつながり、社会とのつながりを生み出し、それが生きるエネルギーになることは、間違いありません。

注1:農林水産省「令和5年度食育推進施策(食育白書)」2024。「図表2-3-4 低栄養傾向の者の割合(65歳以上・性・年齢階級別)」では、BMI20・0㎏/㎡以下を低栄養傾向の指標として設定している。

注2:厚生労働省「令和5年簡易生命表の概況」2024

注3:農林水産省「平成29年度食育推進施策(食育白書)」2018

樋口 恵子:東京家政大学名誉教授/NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」名誉理事長

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