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92歳女性が「葬式はしない」と決めた納得すぎる訳 お墓問題は「体力気力があるうちに決着つける」

東洋経済オンライン / 2025年1月4日 7時10分

なので、現在実家のお墓に入っている5体のお骨を、私の死後、供養塔に移す手続きを取りました。私も死んだらそこへ納めてもらい、いずれ永代供養をお願いすることに決めたら、ほっとして肩の荷が下りました。なぜなら、お墓問題は私の代で終わりにしたいからです。

1人しかいない娘はといえば、親の私と一緒のお墓は嫌で、ペットの猫たちと入ると言っていますから、「墓守」を期待するのは無理というものです。

お墓というものは、代々引き継がれることが前提となっています。しかし、いまはお墓を引き継ぐ人がいないケースが増えました。

私が「ファミレス時代」と名づけたように、少子化や未婚者の増加などによって家族自体が少なくなっているからです。家族がなくて子どもがいなかったら、「お墓の承継」はできません。

その代わり、合同墓や合同納骨堂などが多くみられるようになり、多様なお墓や埋葬の形が提案されています。その人の事情や、価値観に合わせて、お墓が自由に選べる時代になったのです。

どんな形のお墓に納まるのが人に迷惑をかけずにすむのか、また自分らしいのかを考えて、あまり高齢にならないうちに決めておきたいものです。

自治体が管理する公営墓地を増やしてほしい

私がお墓のあり方を考えさせられたのは、「高齢社会をよくする女性の会」の仲間と北欧を訪れたときでした。

デンマークとスウェーデンでしたが、両国ともクリスチャンの国です。日曜日になると教会の前でお年寄りが集い、乳母車の赤ちゃんをあやしたりしていました。

そういった教会を中心にしたコミュニティでは、キリスト教によるお墓が根づいている一方で、地方自治体が管理運営するお墓もありました。

後者は有期限の貸しつけですが、契約期間が切れても希望すれば延長することができ、跡継ぎがいなければ合同墓に合葬するというシステムです。つまり宗教によってまとまる墓地と地域社会によってまとまる墓地があるのです。

日本でも、自治体が管理運営する宗派を問わない公営墓地が各地にあります。最近では地域の有志が共同で建てたお墓もできています。

お墓問題は長く生きてきた人のたしなみ

例えば、ある老人クラブでは、活動仲間で合同墓を作り、希望する人が入れるようにしたそうです。いろいろなお墓があるのはいいことですが、基本的には、地域で暮らしてきたのなら、その地域で眠るのが自然なことのような気がします。

そのためには、住まいから遠くない所に公営墓地がもっと増えることを願っています。

自分のお墓のことはさておき、地方に親のお墓があるもののそれを引き継ぐ人がいない場合、「墓じまいをしなくては」と悩んでいる人も多いと思います。

墓じまいをして近くに改葬する作業はとても大変ですが、いつかは取り組まなければならないことです。

事程左様(ことほどさよう)にお墓問題はめんどうで気が重いもの。体力気力があるうちに、自分たちの代できちんと決着をつけておいたほうが、あとに残る人たちを悩ませずにすみます。

理性をもって、現実から逃げずに向き合うことが、長く生きてきた人のたしなみだと思います。

樋口 恵子:東京家政大学名誉教授/NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」名誉理事長

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