退職者による「企業秘密」漏えいを防ぐ4つの方策 「秘密保持契約」を形骸化させてはいけない
東洋経済オンライン / 2025年1月6日 8時30分
雇用の流動化が進むにつれ、退職者・転職者による企業秘密の漏えいリスクが高まっています。企業秘密が持ち出されると自社に損害が生じることは当然ですが、転職者が情報を持ち込んできたときにも法的トラブルが生じ得ることは、知っておかなければなりません。そこで、自社の企業秘密の漏えいを防ぎ、他社の企業秘密を侵害しないために企業がとるべき対応と留意点を解説します。『企業実務』の記事を再構成し、アサミ経営法律事務所弁護士の浅見隆行さんが、前後編の2回にわたって解説します。
転職が日常になった「人材大流動化時代」
人材大流動化時代とも言われている現在、働き方に対する価値観の多様性とも相まって、「企業秘密」に接することができる従業員(派遣社員や期間従業員を含みます)の退職、転職は日常茶飯事となっています。
その結果、終身雇用時代に比べると、自社の「企業秘密」に接することができた従業員が、「企業秘密」を持って同業他社に転職する、あるいは独立するリスクが高まっています。また、転職者を中途採用する場合には、転職者が、前職の「企業秘密」を自社に持ち込むリスクも高まっています。
そこで本記事前編では、退職者が「企業秘密」を持ち出し、転職先で使用する場合の対応と対策を、後編では転職者が前職の「企業秘密」を持ち込んでくる場合の対応と対策を解説します。
退職者による「企業秘密」の持ち出しを防ぐための方策
退職者が「企業秘密」を持ち出すことを防ぐための方策について、①人的管理、②組織的管理、③物理的管理、④技術的管理の4点から説明します。
(1)人的管理
人的管理とは、退職者に「こういう類の情報は企業秘密に該当する」「企業秘密を持ち出してはいけない」「企業秘密を自社の業務以外の目的で利用してはいけない」などのルールを認識させることです。代表例が、退職者との秘密保持契約の締結(図表)と、退職後の「企業秘密」の取扱いに関する説明の実施です。
※外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください
①退職者と秘密保持契約を締結する方法
多くの企業が、退職の際に、退職者と「秘密保持契約」を結んでいると思います。しかし、退職の手続きに必要な書類など複数の書類にサインさせるのと同時に行い、秘密保持契約の締結が、流れ作業のようになっている企業は少なくないようです。
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