スズキを巨大企業にした鈴木修氏「娘婿の意地」 「中小企業のおやじ」が見せた経営への執念
東洋経済オンライン / 2025年1月7日 8時0分
12月25日、スズキ相談役の鈴木修氏逝去(享年94)の訃報に触れ、社長時代にインタビューしたときのことをふと思い出した。工場と隣接するスズキ(静岡県浜松市)の本社オフィスで待っていると、ネクタイを緩めた鈴木氏が走るようにして入ってきた。まさに、その印象はエネルギッシュな自称「俺は、中小企業のおやじ」だった。
「相変わらず、お忙しそうですね。貴重なお時間をとっていただき、ありがとうございます。どこかお出かけだったのですか」と話しかけると、「ネジ拾いをしていたんだ」といたずらっぽく微笑んだ。
まさに、1981年から2008年まで業務提携していたアメリカのゼネラル・モーターズ(GM)のジョン・スミス会長とリチャード・ワゴナー社長(両者・当時)に向かって言った「ボトムアップ・イズ・コストアップ、トップダウン・イズ・コストダウン」の実践である。
「経営への執念」が生まれた背景
この一言は、単なる節約志向ではなく、トップが落ちているネジ1本を見つけようとするほど、国内外の工場(会社)の隅々まで目を配る「経営への執念」を表している。
ではなぜ、これほどまで鈴木氏は執念を燃やすことができたのだろうか。その要因として、浜松市を象徴する方言である「やらまいか」で説明する人は多いだろう。
この言葉は「やってみよう」「やってやろうじゃないか」を意味し、新しいことに果敢にチャレンジする精神を表している。ホンダ、ヤマハ、カワイ、浜松ホトニクスなど、世界を代表する企業が相次いで生まれたのも、こうした地域性があったからと考えられる。
だが、鈴木氏にはそれ以上に強く働いた原動力があった。それは、インタビューしたとき以来忘れられない鈴木氏の一言に集約されている。「娘婿がこの会社をだめにした、と後ろ指をさされたくない一心で、これまで頑張ってきた」――。
1920年に鈴木道雄氏が「鈴木式織機」として創業したスズキでは、2代目の鈴木俊三氏(道雄氏長女の夫)以降、3代目の鈴木實治郎氏(俊三氏の実弟、道雄氏三女の夫)、そして1978年に4代目として就任した鈴木修氏(俊三氏長女の夫)に至るまで、歴代、娘婿(婿養子)が社長を務めてきた。幸い、鈴木家の娘婿は皆優秀だった。
スズキの歴代社長が持っていた「娘婿の意地」
スズキの社長たちにとって、娘婿という立場はいい意味でのプレッシャーになった。このような思いは、修氏だけでなく、歴代の娘婿社長が持っていたのではないだろうか。
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