スズキを巨大企業にした鈴木修氏「娘婿の意地」 「中小企業のおやじ」が見せた経営への執念
東洋経済オンライン / 2025年1月7日 8時0分
鈴木修氏が社長に就任してからの45年間でスズキの売り上げを約17倍に伸ばした。今や5兆3742億円企業(2024年3月期)になっている。
鈴木氏に限らず、優秀な娘婿が会社を大きく成長させた事例は少なくない。女性のリーダーがめずらしくない時代となった今、昔話に聞こえるかもしれないが、京都の商家では、娘が生まれると親は大変喜ぶ、と言われている。長男に跡継ぎを限定すれば、選択の幅が狭まるからだ。
今の時代であれば、娘を社長に娘婿をサポート役にさせるというトップ人事も良いのではないか。老舗旅館の女将さんシステムに見られるように、表は私、裏は僕、という日本的トップ人事という手もある。
一口に世襲といっても、同じ東アジアでありながら、日本と中国、韓国では大きな違いがある。儒教文化の歴史的影響や社会が不安定で家族しか信じられないという心理が熟成されたせいか、中国、韓国は「血」のつながりを重んじるのに対して、日本は「家」の持続的発展を優先し、必ずしも血縁でなくてもよいと考える。その結果、娘婿という制度が必然的に生まれたようだ。表面的には同族経営に見えるが、実態は能力重視型の同族内トップ人事と言えよう。
1930年生まれ戦中派世代の鈴木氏は、銀行員を経てスズキに入社した後、先輩たちの「お手並み拝見」といった周囲の鋭い監視と人間関係に耐えなくてはならなかった。そのほか、義父からも厳しい経営指導を受ける。このような娘婿の苦悩を乗り越えて、自ら実績を積み重ね、実力を証明していかなくては周囲がついてこない。親族からも見放される。
スズキにとって知性と行動力に長けた社長候補の娘婿を失ったのは想定外だったが、「娘婿企業スズキ」で実子(長男)が継ぐという初の統治形態が試されている。
ファミリービジネスの成否を左右するもの
ファミリービジネスの成否を左右する家庭の存在自体が大きく変化している。かつて、企業を経営する富裕層といえば、大きな屋敷に3世代、4世代同居というケースがめずらしくなかったが、今やそうした層でも夫婦と子供からなる核家族へと急速に変化している。
スープの冷めない距離に住んでいるかもしれないが、家で日常的に創業者が孫に経営の話をする機会はめっきり減った。少子化により兄弟間で家の事業について話すことも少なくなっている。
さらに、家父長制度の崩壊による意識の変化、友達のような親子関係や離婚の増加は、ファミリービジネスにおける「家庭の影響」を大きく変えた。ファミリービジネスを営む家庭も「普通の家庭」になりつつあると言えよう。
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