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大戸屋が挑戦「1980円・高級すき焼き」の"実力" ペッパーフードも同種の業態出すも狙いは異なる

東洋経済オンライン / 2025年1月9日 7時50分

「すきはな」のターゲットにはインバウンドも見込んでいる。海外からの旅行客はお金や時間をかけて遠路はるばる日本に来ているのだから、食事に求めるのは「日本ならではの食体験」であり「満腹になること」が第一ではないはずだ。そういう意味では「すきはな」はニーズにマッチする。

海外の人からしたら、日本のすき焼きや和牛はぜひ味わってみたいもの。しかし多くのすき焼き店では肉以外にもいろいろな具材が入っており、それだけでお腹がいっぱいになってしまう。鍋なので食事の時間もかかり、サクッと食べて退店とはいかない。

限られた旅行日程の中で、旅行客は他にも日本で食べたいもの、やりたいことがたくさんあるはず。そんなときにすき焼きの真骨頂だけを抽出した「すきはな」は、ぴったりの業態なのかもしれない。

筆者はリサーチを兼ねてインバウンド向けの飲食店に行くことも多いが、丼もののごはんやラーメンの麺を食べ残している海外のお客をよく見る。海外旅行をする人なら、「たしかに、少しだけ食べたいけど、胃袋が限界で食べられないときがある」と共感するのではないか。

一方の大戸屋は、日常食の店だ。ターゲット層も、日本人だろう。「国産黒毛和牛のすき鍋」は1980円の特別な商品だが、多くの人は大戸屋にはお腹が空いたときにふらりと立ち寄るはずだ。

異なる「すき焼き」、どちらも狙いは良い

大戸屋が創業したのは、日本人の4人に1人が栄養不足と言われていた1958年。時代が変わっても、手頃な価格でお腹を満たせる店でありたいという精神は今も受け継がれている。「健康」も大戸屋が重視するキーワード。多くのメニューに野菜が使用されており、「すきはな」のように野菜ナシはあり得ないのだろう。

もともとハレの日のごちそうのイメージが強いすき焼きを、1980円という価格にデフォルメした大戸屋とペッパーフードサービス。それぞれの個性が発揮されたアウトプットとなった。

大戸屋のホームページの文言から、勝手に宣戦布告か?と考えてしまった筆者だが、2つはまったく異なる利用シーンを想定されている商品である。ともに消費者を驚かせ、楽しませる商品を編み出したという点では、両方が勝者と言えるのかもしれない。

大関 まなみ:フードスタジアム編集長/飲食トレンドを発信する人

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