進学校の子の親ほど「子供の将来」に苦しむ矛盾 「将来への備え」という現代病にかかっている
東洋経済オンライン / 2025年1月11日 8時40分
鳥羽:本当にそのとおりです。自信がない親というのは、自分なりの価値基準を持っていない人です。「少しでもいい大学に行ってもらえたら」と発言する親と話してみると、その親だってその価値観を盲信しているわけでもない。ただ、自分の価値基準がないから、そこに拠っているだけなんです。そういう意味でも、大人も勉強して新しい世界を発見すること、自分なりに考え続けることは大事ですね。
井本:親も考えていないわけではないんだろうけど、現実から目を逸らしているところはありますね。それでも、勇気を持って現実を直視してもらいたい。
「将来への備え」という現代病
井本:大人はどうしても「将来への備え」のために、いま何をすべきかという考え方になりがちです。それがエスカレートしすぎていて、もはや「将来への備え」という現代病にさえなっている。集団ヒステリーだから止めようがないです。不確実な未来に備えて、子どもたちのかけがえのないいまを奪うのがよくないことはわかっている。
だけど、みんながやっているから、自分だけ抜け出せない。「自分の子どもにもやらせなきゃ」と無理やり思い込む。大人のパニック状態に、子どもが付き合わされているんですね。
鳥羽:そして教育産業が親の不安につけ込んで親子を囲い込むことで、教育の世界は悲惨なことになっている。どの業界でもそうでしょうけど、資本主義が行き詰まって、もう差異なんて簡単には創出できないからと、不安を煽って稼ぐ人が増えているように思います。不安は儲かりますからね。「将来への投資」とか言うけど、あんなの根拠はまったくない。
井本:教育産業は、約束した結果を出さなくても訴えられないですからね。逆に、いもいもは「結果を保証します」という契約じゃなくて、思いに共感してもらってるから、うまくいっているのかもしれません。思いというのも、「その子がいまそこにいるのに、その子のままでダメなはずがない」ということです。キラキラしてる子どものいまを見られるから、親も自然と納得してくれるんじゃないかな。
鳥羽:「将来の不安」のように、親の心配を子どもが内面化する現象はあらゆるところで起こっています。我が子を少しでも大切にしたいと、何でも先回りして傷つかないように配慮する親が増えたし、社会全体もそれが善であるという方向で進んでいる。
でも、そういう心配や配慮を内面化した子は、自分で生きる力をどうやって手に入れたらいいのか、と。
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