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江戸のメディア王・蔦重を駆り立てていた原動力 NHK大河「べらぼう」主人公に学ぶ仕事のコツ

東洋経済オンライン / 2025年1月12日 18時0分

蔦重の身にそういったことが起きるのも、一度や二度ではありませんでした。

また、蔦重の強すぎる信念についていけず、去っていく仲間や奉公人も少なくはありませんでした。

もちろん彼を慕ってくれる人たちも多かったものの、やはりどこか「孤高の人」だった蔦重にとって、孤独を極めるということは、捨て身の自由さを手にできる反面、漠然とした寂しさを感じさせるものだったのかもしれません。

また、幼少期から男女の愛憎を見て育った蔦重にとって、吉原通いの殿方が花魁に軽はずみに行ったリップサービスによって、彼女が半狂乱になる、あるいは逆に、遊女の手練手管(てれんてくだ)に客が翻弄される……などといった事態も、日常的な風景。人の言葉を信用して馬鹿を見るのは自分だと、幼い時分に学んだのかもしれません。

そういったなかで、そもそも人に期待しない、もし誰かに裏切られて傷ついたとしたら、期待した自分を恥じること……そんなマインドが醸成されていったのです。

二度と騙されないように用心すること

「人に裏切られたら、馬鹿だった自分を呪う」。これは決して、何かあったときに自分を責めろということではなく、その真逆です。大切な自分が二度と同じ目に遭わないよう、自己防衛するための賢い術なのです。

たとえば会社で、あなたの渾身の企画が、同僚に盗まれてしまったとします。

そのとき、悪いのは相手であることは大前提ですが、自分自身にも隙がなかったか、今一度振り返ってみるのです。

うっかり相手を信用して、企画の概要を話してしまわなかったか。誰もが目につくところに、内容が網羅された書類を置いてしまっていなかったか。

あるいは、この世で自分だけにしかできない企画であれば、そもそも相手に真似されることもなかったのではないか……そんなふうに、思いを巡らせてみるのです。そして二度と同じ目に遭わぬよう、徹底的に策を凝らしていきましょう。

理不尽な目に遭ったとき、自分の何がいけなかったのだろう?と振り返るのは、いわば傷口をえぐるような行為です。できることなら蓋をして、目を背けたくなるのは当然ですよね。

でもそこをぐっと堪えて勇気を出し、自分のあり方を見つめ直せる人は、どのような経験も力に変えていくことができます。

「運が悪かったんだね、どんまい」で終わらせず、歯を食いしばってでもセルフフィードバックができる人こそ、一生進化し続けられる人なのです。

車浮代:時代小説家、江戸料理文化研究所代表

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