「60歳で教師」になった女性が2年間で得た気付き 教師に憧れながら企業就職、からの伏線回収
東洋経済オンライン / 2025年1月13日 12時0分
「私はこのまま“ただ者”では終わりたくない。4年後のオリンピックに出て、必ず結果を出します。まずは2年、死ぬ気で頑張ってみて、芽が出なければ故郷に帰ります」
この言葉に心を打たれた小川さんは、「ファン1号になる」と約束し、国内、海外問わず試合を追いかけて応援。その後、有森さんは自身の宣言通り、入社2年後にマラソンの日本最高記録を更新。初出場となった1992年のバルセロナオリンピックで銀メダルを獲得する。
一方、当時の小川さんは30歳。人事として採用面では結果を出してきたが、論理的に全体の戦略を考えることが苦手だったことから、ゼネラリストとしての管理職の道はないと退職を考えていたという。
そんなときに本の情報誌『ダ・ヴィンチ』が創刊。ミステリー、ホラーの分野が得意なことをアピールして、編集部に異動がかなったのが32歳。会いたかった作家に取材し、手応えのある記事を書くこともできたが、編集スキルのなさから企画はボツになることも少なくなく、他部署への異動を打診され退職を決断。フリーの編集・ライターとなる。
「せっかくフリーになったのだから、お金になる仕事より、まずは自分が一番やりたいことをやったほうがいい」という友人の助言を受け、スポーツの取材をすることに。フリーでも取材のアポイントのとりやすい、これからブレイクしそうな若手のアスリートを中心に「1競技、1人」と決め、狭く深く取材をしていった。自腹で60回以上、世界のあちこちまで、追いかけていた選手たちの試合を見に行った。
取材を通じてさまざまなアスリートと親交を深め、キャリア相談などに乗っていた経験が買われ、今度は「JOC(日本オリンピック委員会)キャリアアカデミー」の立ち上げメンバーとして声がかかった。
トップアスリートの就職サポートから引退したアスリートのキャリア相談、社会性を学ぶ研修の企画やキャリアガイドブックの編集まで、それまでの経験をフルに生かしてアスリートの支援に尽力した。
JOC在職中に関わった選手の数は、883人。「相談に乗る立場になったことで、よりアスリートとの距離が近くなり、さまざまな悩みを本音で話してくれるようになりました」。
56歳で新たな会社を設立したが…
JOCでは支援できる範囲が限定的であったことから、56歳で退社。東京オリンピック前で、企業もアスリートやスポーツに対しての興味が高かった時流に乗って、自ら企業と選手をつなげていこうと、2017年にキャリア支援会社を設立した。多く企業とアドバイザー契約を結びアスリート社員の採用をするなど順風満帆かに見えた。
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