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「1丁の護身用の銃」巡り変貌したイラン家庭の姿 映画「聖なるイチジクの種」の制作の裏側

東洋経済オンライン / 2025年1月13日 13時0分

女性はヒジャブをつけて髪を隠し、身体も露出のない衣装を着用することが求められるようになったが、それは政府に対して、そして宗教に対して服従していることの象徴であり、逆にヒジャブをつけないことは反権力の象徴とみなされた。

本作のメガホンをとったモハマド・ラスロフ監督は、1972年イラン生まれ。大学で社会学を学ぶ傍ら、ドキュメンタリーや短編映画で映画制作のキャリアをスタート。2017年の『ぶれない男』でカンヌ映画祭「ある視点」部門グランプリを、2020年の『悪は存在せず』でベルリン国際映画祭最高賞の金熊賞を受賞している。

2022年夏に収監されていたラスロフ監督は、監獄内で「女性、命、自由」の運動が起きていることを知り、やがてこの運動を支援する映画をつくりたいと思うようになる。だが当然ながら撮影は困難を極めた。

外部に漏れないように信頼できるスタッフ、キャストを集め、安全を確保するために少人数での撮影を敢行。撮影はほぼ物語の時系列通りに行われた。そしてその撮影した映像は、ドイツに住む編集技師アンドリュー・バードのもとに送られ、撮影と同時進行で秘密裏に編集作業が行われた。

またラスロフ監督は、観客に反政府デモの様子を臨場感を持って実感してもらうために、脚本執筆の初期段階からSNSに出回っているデモの動画を取り込むことを決意。そのときイランで何が起こっていたのか、観客はその惨状を目の当たりにすることになる。

イランを脱出した監督の言葉

イランを脱出し、カンヌに到着したラスロフ監督は声明の中でこう主張している。

「この映画に出演したことで、彼ら(俳優たち)は起訴され、出国を禁じられました。カメラマンの事務所は強制捜査に遭い、機材はすべて押収されました。音響技師がカナダへ出国することも妨害されました。諜報機関は映画クルーの取り調べの際、私にカンヌ映画祭からの撤退を促すよう要求しました。クルーに対し、映画のストーリーを認識しないまま私に操られてプロジェクトに参加させられた、と丸めこもうとしていたのです」

そのうえで表現の自由の制限や抑圧は正当化されるべきではないと訴えかけるラスロフ監督。167分という上映時間も忘れてしまうくらいの緊張感と没入感を体感できる映画となっている。

壬生 智裕:映画ライター

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