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社外の知恵が生むJR東「驚きビジネス」誕生の裏側 自社では思い浮かばないアイデアが続々登場

東洋経済オンライン / 2025年1月14日 6時30分

一般的なベンチャーキャピタルはベンチャー企業に出資して株式を取得し、将来その企業が上場した際に株式を売却してキャピタルゲインを得ることが主目的であり、上場しそうな会社を選んで出資する。一方、JR東日本スタートアップは出資先の株式上場も念頭には置いているものの、出資の判断を左右するのはあくまでJR東日本グループのリソースを活用して新たなビジネスやサービスを創造できるかどうか。その点が一般的なベンチャーキャピタルとの違いである。

「当社は社員総出でスタートアップ企業の発掘に当たっています」と同社の担当者が話す。スタートアッププログラムへの応募を待つだけでなく、他社から紹介を得たり、イベントなどで声がけしたりすることもある。

これはという企業に出会い、選考を通過すれば、その後は担当企業と二人三脚でJR東日本との協業に向け動き出す。実証実験では駅や列車などJR東日本のリソースを使うため、JR東日本の各部署とのコミュニケーションも不可欠だ。担当企業は社員1人あたり10社程度になるといい、JR東日本とこれらの担当企業を行ったり来たりする毎日だという。

さて、冒頭で触れた発表会に話を戻す。2024年4月から参加企業を募ったところ154件の応募があり、10件が採択され、プレゼンテーションを行った。冒頭のイナックはその1社である。

「ゼロキロポストを起点に線路はいろいろなホームにつながっていく。ゼロを起点にいろいろな方向に伸びていこう」――。

開会に先立ちJR東日本の喜㔟陽一社長が鉄道路線の起点にある距離標「ゼロキロポスト」をビジネスの起点にたとえて挨拶を行った。その後、トップバッターのイナックに続き9社が力のこもったプレゼンを行った。

青森市に本社を置きAI開発などを行う「フォルテ」は、積雪発電という雪国ならでのユニークなアイデアを披露した。雪と熱源の温度差を利用しスターリングエンジンのピストンを動かし発電する。雪を溶かすと同時に電気も得られるという二重のメリットがある。機器のリース代や燃料代などの費用がかかるものの除雪費用と比べれば割安だという。2024年12月から青森駅近くにあるJR東日本グループの商業施設で実証実験を行っており、積雪発電によって生まれた電力はイルミネーションイベントの一部に使われている。

JR東本体にも刺激に

10社のプレゼンがすべて終わり、審査の結果、九州工業大学発の協調移動ロボットベンチャー「TriOrb(トライオーブ)」が大賞を受賞した。同社が開発した自律走行ロボットは車輪の代わりにボールを使うことでミリ単位の精度で移動が可能で、さらに重さ1トンの荷物を運ぶこともできる。

「駅構内の狭隘な場所も自律移動できるので建物の点検作業を省力化できるほか、重量物を運べるので作業安全性も向上する」というのが売り物だ。発表会の審査員を務めるJR東日本の伊勢勝⺒副社長は「早く実用化してほしい」と期待を示した。

高輪ゲートウェイ駅近くの古いビルにJR東日本スタートアップのオフィスが置かれている。ここで働くスタッフたちはみなIT企業の社員のようなカジュアルな服装を身に纏っており、一見しただけではJR東日本グループの社員とはとても思えない。JR東日本スタートアップの使命は、スタートアップ企業と協業してJR東日本単独では思いつきそうもない「驚きビジネス」を生むことだが、彼らがこの仕事で得た経験もJR東日本の本体に大きな刺激を与えるに違いない。

大坂 直樹:東洋経済 記者

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