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「死ぬのが楽しみに」ふるさと難民が森で得た希望 岩手「いのちを還す森」 埋葬予定の森を手入れ

東洋経済オンライン / 2025年1月15日 8時20分

ふるさとを持たない人にとって、生前通い、手入れしてきた「いのちを還す森」にいずれ埋葬される、ということは心のよりどころになっているという(写真:ハヤチネンダ)

樹木葬、散骨、手元供養……はては宇宙葬まで、没後の選択肢が多様化する現代。死後に自分が眠る予定の森に生前から通い、その森づくりに参加する「いのちを還(かえ)す森」の取り組みが岩手県遠野市を舞台に始まった。

【写真】遺骨の一部を「いのちを還す森」に埋葬した

都市部で生まれ育ち、ふるさと(故郷)を持たない人が増える中、死生観を問いかけるプロジェクトだ。

月に1度の遠野の「森入リ」首都圏からも

柳田国男の『遠野物語』で知られ、「日本のふるさと」と称される遠野市山あいの荒川集落。2024年12月半ば、雪が舞う氷点下の中で、一般財団法人ハヤチネンダが企画する「いのちを還す森」の、月に1度の「森入リ」が行われていた。

【写真】「いのちを還す森」の活動に密着した(12枚)

参加者は、財団メンバーも含めて7人。岩手県内だけではなく、東京や神奈川など各地から集まった人たちは30代からシニアまで幅広い。

死後、この森に自身の骨を埋葬すると決めている人もいれば、このプロジェクトに興味を持って初めて遠野に来た、という参加者までさまざまだ。

緩やかな傾斜の山林は、コナラやクリ、カラマツなど多種多様な木があり、かつては薪や炭を生産するために利用されていた、いわゆる里山だ。

この日の「森入リ」では、のこぎりで伐採した枝をバイオネストという方法で鳥の巣のように編んだり、お茶やアロマオイルとして活用できるクロモジの枝を採ったり。

これまで数年かけて、密集した木の間伐や歩道の整備などを進め、心地よく歩きやすい森づくりをしてきたという。

月会費3000円「死ぬのが楽しみになった」

「いのちを還す森」の活動は、森入リのほかに東京での交流会や宗教学者、哲学者など講師を招いてのオンラインでの勉強会もあり、月会費(活動賛助金)3000円を納めれば、誰でも参加できる。

この森での埋葬には、埋葬費用と活動賛助金として80万円かかるが、月会費を納めた分は相殺できる仕組み。2024年10月のサービスのリリース以前から現地とオンラインでの説明会を重ね、同12月末時点で40人程度の会員が集まっているという。

「会員の8割以上は女性で、40~60代の首都圏在住者が多い。遠野での森入リにはなかなか参加できなくても、会員同士の交流会に参加し、森の様子に関心を持っている会員が多く、活動の理念に共感し入会する人がほとんど」とハヤチネンダ代表理事の今井航大朗さんは言う。

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