1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

「死ぬのが楽しみに」ふるさと難民が森で得た希望 岩手「いのちを還す森」 埋葬予定の森を手入れ

東洋経済オンライン / 2025年1月15日 8時20分

今井さんは父・隆さんらとともに、祖父母の遺骨の一部をこの森に埋葬した。

理事の赤池円さんによると「いのちを還す森に参加したことで『死ぬのが楽しみになった』とか『これで安心して死ねる』という会員は多い」という。

「この森の手入れをしていると、死んだらこの森の風景の一部になれるんだな、自分には還る場所があるんだな、と実感できる」と自身もこの森への埋葬を予定しているという。

構想は30年前、日本の里山の風景を残すには

2024年にリリースされたこのプロジェクトだが、実は構想は1990年代にまでさかのぼる。今井さんの父で、各地で大規模土地利用のプロジェクトを手掛けてきた事業家の今井隆さんが、コンサルティング業務の中で遠野と出会ったのがきっかけだ。

人と馬がともに暮らした昔ながらの暮らしを体験する施設の開発にかかわるうち、中山間地域の景色をどうしたら未来まで残していけるのかを考えるようになったという。

「遠野の風景に魅せられた父は、多くの都市部の開発事業に携わっており、経済合理性に委ねていてはこの美しい風景は残せないということをよく知っていました。遠野の里山の美しい景色を切り売りせずに後世に引き継いでいくための方法として考えたのが、いのちを還す森につながっています」

隆さんは荒川集落の里山の景色を形成している広葉樹の山林を購入。ランドスケープデザイナーの田瀬理夫さんらとともに、その一部を切り拓いて、かつて地域に根づいていた馬と人がともに暮らす空間を作り出し、田畑や小さな滞在施設を整えた。

地域の信仰を集める駒形神社の協力を得て、森林に遺骨を埋葬する方法を模索しながら、人づてで参加者を募り、森林の手入れも進めてきた。

「この風景に価値を感じる人たちから埋葬費用や月会費という形でお金を預かることで、管理費や固定資産税などの経費を賄い、将来までこの美しい森を残していける」と今井さんはその意義を語る。

遠野市含め岩手県内各地でメガソーラー建設による環境破壊や景観問題が多発しており、そういった大規模開発を食い止める効果がある。

長年にわたる隆さんの思いを受け継ぎ、今井さんが財団の代表理事となり、サービスのリリースにこぎつけた。

墓石の代わり? 樹木葬への違和感

東京でデザイン事務所を経営する赤池さんは、東日本大震災後、復興支援活動で東北に通う中で今井さんらの取り組みを知った。

森林とのかかわり方を提案するウェブサイト「私の森.jp」を運営する赤池さんは、以前から樹木葬に関する記事への読者の反応が大きいことが気になっていたという。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください