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人間が「工夫すればするほど増える」アレルギー 残念ながら現代社会では避けられない疾患

東洋経済オンライン / 2025年1月16日 8時1分

本書を読んでいて興味深かったのは、アメリカにおいて食物アレルギーは、「高所得者に多い疾患」と以前はされていたが、現在では、低所得層においても時に重要な疾患になってきたという事実です。診断や治療、管理にコストがかかるというのも1つの理由かと思いますが、低所得者は食べるものを自由に選べないという事情もあるそうです。

寄付された食品を配給するフードバンクに、食物アレルギーのケアが行き届かず、不慮の事故が起こるリスクが高いとのことです。アレルギー対策には日々コストやケアがかかります。これだけ患者数が増えてくると、さまざまな社会問題とアレルギーは切り離して考えることはできないという事実は、私には目からうろこの知見でした。

アメリカは、日本と違い貧富の差が大きい国です。近年大都市に行くと、ホームレスをたくさん見かけます。シリコンバレーのように、高給取りの人たちで栄えている地域もありますが、物価は上がり、家賃を払えずホームレスにならざるを得ない状況があるのかもしれません。

国籍や経済状況を問わず、アナフィラキシーを避けながら栄養状態を維持し、皆さんが食べたいものを自由に食べられるよう、我々研究者はアレルギー疾患の管理や治療方法の開発を急がねばなりません。

花粉症が引き起こす食物アレルギーが増えている

最近は、食物アレルギーだけでなく、花粉症の悪化から、花粉の抗原と交差性をもつ抗原を含む果物や野菜にアレルギー反応を起こす、花粉―食物アレルギー症候群の患者さんも増えていると聞きます。モモやキウイを食べると口がヒリヒリするとか、腫れるというようなことが起きるのです。

他にも、好酸球性胃腸炎や急性食物たんぱく誘発胃腸炎など、IgE抗体を介さないアレルギーの症例も増えてしまっているのが現状です。

ちなみに今の気候変動もアレルギーが増える理由の1つとして本書には挙げられています。植生の変化が新たな抗原を地域に持ち込み、温暖化は花粉を増やしているとのことです。嬉しいニュースではありません。

生活環境や習慣から気候の変動まで、アレルギーが減る要因が1つとして見つからず、八方ふさがりです。避けられないアレルギーという病気と我々はどうやって付き合っていけばいいのでしょうか? 

病状を把握し、改善・管理するしかないかもしれません。診断については、前編で少し触れました。 

花粉症や食物アレルギーの患者を対象として、抗原となる花粉や食物を毎日、症状が出ない程度の量を少しずつ摂取することで、免疫を寛容へと導く免疫療法が行われるようになってきました。奏功する患者さんもいる傍ら、途中でアレルギー反応がでてしまったり、長期にわたる療法途中に、やめてしまう患者さんも少なくないようです。一度は治っても、再発する人もいます。

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