JAL「パイロット飲酒問題」、現場の警告は届かず 客室乗務員や整備士は不安の声を上げていた
東洋経済オンライン / 2025年1月16日 8時0分
「パイロットの飲酒問題について、JALが明かしていないことがある」
【写真】東洋経済の質問に対するJAL広報部の回答文書によると、副機長が吐き出した内容物は「完全に水だった」と機長が確認したという
日本航空(JAL)のある関係者が言う。「パイロットの飲酒問題」とは、2024年12月1日のオーストラリア・メルボルン発成田行き774便の機長(59)と副機長(56)が乗務前日に過剰な飲酒をしたことにより、出発が3時間以上遅れた問題だ。
機長と副機長は出勤予定時刻の約14時間前まで、JALの定める運航規程の3倍以上のアルコール量となるスパークリングワインのグラス1杯ずつとワインボトル3本を飲み干していた。それにもかかわらず、「飲酒はワイン1本」と虚偽の口裏あわせをしていた。
副操縦士を含めて3人いるパイロットのうち、機長は腹痛と偽って出勤を遅らせ、副機長に至っては酒気帯びで出勤した。そのうえ乗員がそろって受ける正式なアルコール検査を実施せず、1人でアルコールが検知されなくなるまで自主検査を繰り返していた。
組合幹部も歴任した副機長は、2018年にもアルコール事案でトラブルを起こしていた。「社内ではいわくつきの人物だった」とJALのOBは語る。
JALは2人をすでに解雇し、国土交通省は「アルコール検査が適切に実施されなかった」などとして昨年12月27日、JALに業務改善勧告を出している。
検査前に飲んだ水を機内で嘔吐
南正樹運航本部長は昨年の会見で、「悪質な乗務員を組織で管理できていなかった」と反省。そのうえで、「会社の規程では(副機長以外の)他の乗員は『怪しいぞ』と思ったら運航本部に連絡する手順があったが、それがしっかり認識できていなかった」と述べていた。
だが、南本部長が会見で触れなかった事実が、関係者やJALへの取材を通じて判明した。
件の副機長は、機内での客室乗務員らとの出発前打ち合わせの最中、嘔吐していた。それを見聞きした客室乗務員や整備士が、副機長の体調を確認し運航を再考するよう、機長や空港所長に強く進言していたのだ。
東洋経済の取材にJALの広報部は文書で回答。「副機長が吐き出したのはアルコール再検査の前に大量に飲んだ水だった」と説明した。「機長は吐き出された内容物が完全に水だったと確認した」ともいうが、大量に水を飲んだのは過剰飲酒をごまかすためだったと捉えるのが自然だろう。
運航の再考を促した客室乗務員と、機長とのやりとりの概要もわかった。
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