アメリカの存在感が高まる「カナダ」の外交の今後 重要な視点は移民「国民の4分の1が外国生まれ」
東洋経済オンライン / 2025年1月17日 15時0分
そのうちの2つが「アメリカ」と「移民」だ。これらの視点から読み解くと、そこには、カナダという国家が営む外交の実像が見えてくる。
カナダ外交におけるアメリカの存在感
「数字は嘘をつかない」と言ったのは、“近代統計学の父”と称される数学者アドルフ・ケトレーだった。カナダとアメリカの関係を数字で見てみよう。
2023年のIMF(国際通貨基金)統計で、アメリカのGDPは27兆3578億ドル。対するカナダは2兆1400億ドル。アメリカの10分の1に満たない。この2カ国が8000キロ以上の国境線で接している。
カナダはGDP世界10位の経済大国であり、重層的な自由貿易協定のネットワークを持つ通商国家である。2022年の統計では、世界第10位の貿易大国だ。
しかし、その内訳は、カナダの全輸出の75%、全輸入の50%がアメリカ相手である。
対カナダ直接投資においても44%と、アメリカは群を抜いている(2022年)。イギリス、日本がアメリカに次ぐ投資国であるが、その比率は、それぞれ7%、4%である。
これらの数字を、カナダの一方的なアメリカ依存と捉えれば、それは短兵急にして実像を見失う。17世紀以来の歴史をともに歩み、自由と民主主義と市場経済を尊ぶ同志だ。両国の間の強固な相互依存を示すと捉えるべきだ。それでも、カナダ経済はアメリカなしには成立しない。
さらに、安全保障を見てみよう。
カナダは、国家防衛という点で地理的恩恵を受けてきた。東西は大西洋と太平洋、南はアメリカ、北はアラスカと北極だ。天然の要塞といっても過言ではない。
しかし、冷戦期におけるソ連の核の脅威はリアルだった。
21世紀のポスト冷戦の状況は、地球温暖化による北極圏の氷の融解で一変した。カナダの国家防衛に占めるNORAD(北アメリカ航空宇宙防衛司令部)の重要性があらためて強く認識されている。
また、カナダの陸・海・空軍の武器・装備品、戦車、艦船、航空機の相当部分がアメリカ製だ。
経済と国土防衛の両面で、両国が密接な関係にある以上、カナダの外交政策において、インド太平洋であれ、中東であれ、アメリカとの関係が圧倒的な比重を占めるのは、必然である。
カナダとメキシコの関係に変化が
比較のために、最近のカナダ・メキシコ関係を見てみよう。
カナダ、アメリカ、メキシコの3カ国は、USMCAによって経済分野を軸に関係が深化。3カ国の首脳は毎年、スリー・アミーゴス・サミットと呼ばれる北米首脳会談を持ち回りで開催。
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