高血圧予防には塩分制限と思う人が知らない真実 もっとも注意すべきことは食事ではなかった
東洋経済オンライン / 2025年1月17日 8時20分
高血圧を心配していたり、実際血圧がやや高かったりする方は多いかと思います。高血圧は心臓病や脳卒中だけでなく、認知症のリスクでもあり、できるならかかりたくない病気です。高血圧予防と聞くと、真っ先に塩分制限が思い浮かぶかと思います。しかし、高血圧のような生活習慣病を「塩分制限」のような単一の要因で説明しようとするのは、大局を見誤る危険があります。ここでは、高血圧の予防について、最近私が執筆した論文をもとに科学的な知見を紹介していきます。
「肥満・食事・運動・アルコール」どれが影響?
高血圧、と一口に言っても、実は「いつ発症したか」が大事だと言われています。高齢になる前に発症する高血圧は、特に認知症のリスクであることが知られています。逆に高齢になってから下の血圧(拡張期血圧)が上がることは、むしろ良い老化プロセスを反映しているという意見もあるほどです。ですので、比較的早くに発症する高血圧がどのような要因によるのか、を理解することは、高血圧予防の観点から大事です。
私たちは、これを20万人以上のアメリカのデータを使って検証しました(※1)。医療職の人たちを30年近く追跡した研究で、どのような要素により若年で高血圧発症(55歳未満での発症)しているかを、統計モデルを使って調査しました。具体的には、肥満、食事、運動、アルコールに注目し、どれが高血圧発症に影響しているのか検討しました。
結果、なんと肥満がもっとも重大なリスクであることが判明しました。若年での高血圧発症の約35%が肥満によって説明されたのです。食事と運動はそれぞれ高血圧発症の15%程度を説明しており、アルコールはそれよりやや低い結果でした。
塩分の摂取量を測定するのは困難
この結果が示唆するのは、「食事や運動も大事だが、とりあえず減量を目的とするアプローチが高血圧予防には効果的だ」ということです。高血圧といえば塩分、と思っていた方には、少し斬新な知見ではないでしょうか? しかし、全ての研究には限界点があります。この研究の限界は、それこそ塩分の測定法にあるのです。
実は、塩分の摂取量を測定するのは、非常に困難なのです。きちんと測定するには24時間蓄尿を行い、尿中の塩分量を測定しなければならず、しかもそれを数日行う必要があります。しかしこれはなかなかできませんよね。そこで私たちは、質問票のデータをベースに塩分量を予測する機械学習モデルを作りました(※2)。
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