停戦に向けてウクライナに残された3つのシナリオ トランプ新大統領は早期停戦をまとめられるか
東洋経済オンライン / 2025年1月17日 8時0分
もう1つのウクライナは「新ウクライナ」であり、ウクライナ・ナショナリストを排除した国家であり、ファシズム的イデオロギーを持たないウクライナであるという。この国家は経済的にロシアに統合され、政治的に中立を保つ。
この新ウクライナは、ソビエト時代の共和国より独立性を持つという。このウクライナはロシア経済圏、そしてユーラシア経済圏に包摂される。その場合、ウクライナのオリガルヒ(新興財閥)も排除される。
こうして新ウクライナは東スラブ文明の一翼として存在し、独立した旧ソビエト国家と同様に、ロシアとの密接な関係を保つ国家となり、ウクライナ正教会が新しい国家の精神的支柱となるという。
ロシアとの関係は切れないのか
以上がトレーニンの主張のあらましであるが、いかにもロシアらしい、ウクライナとしては承服しがたい未来像だ。ウクライナをロシアと同じ東スラブ文明の一員と位置づけ、ロシアとの密接なつながりが強調されているからである。
第1のモデルは「完全なロシア化」であり、そのためには戦争は今後も続き、完全なウクライナの敗北まで終わることはないだろう。だから、実現性のあるモデルではない。
第2のモデルは、ウクライナの敗北が完全な主権喪失になり、シリアやイラクのようなアナーキーな国家として混沌とした状況の不安定地帯としてのウクライナが続く。
ゼレンスキー政権が内部崩壊し、無政府状態が続けばその可能性はあるが、望ましい状態ではない。
第3のモデルこそ現実的なモデルであるが、これとてウクライナ政権には承服しがたいであろう。
残された西ウクライナの西の地域、すなわち自由ウクライナはポーランド、ハンガリー、ルーマニア、スロバキアに返還され、ウクライナのNATO入りはほぼ実現するものの、それはもはやウクライナとしてのウクライナではなくなるからである。
そして新ウクライナは、国家として存続するものの、ロシアと密接な旧ソ連の共和国と同じような位置づけになり、NATOやEUとの関係が完全に断たれ、BRICS経済圏に包含されてしまう。
これはあくまでも1つのロシア人の案であり、プーチンの案ではない。しかし、現在の戦況から見て、ロシアは占領した地域のみならずウクライナ全体をロシアの緩衝地帯にしたいという意図を持っていることは確かだ。
ウクライナの非武装中立化?
NATOやEUに参加しないという条件がそれであり、そこは譲れない部分といえる。
戦況を有利に展開するロシアは、占領した地域のみならずウクライナ全土を中立の非武装地帯として考えることは間違いないだろう。そうすると停戦は簡単にまとまりそうにはない。
まとまらないとなれば戦争は終わることなく続き、最終的には第1の併合モデルか第2のアナーキーなモデルになるのかもしれない。今後の状況は、どこまでウクライナが譲歩できるかという問題と、西欧勢力が武器の支援を行わないという条件にかかっているといえる。
かくも複雑な戦後の処理をどうするのか。トランプのお手並み拝見といきたい。
的場 昭弘:神奈川大学 名誉教授
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