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中居騒動で「示談金の多寡」を論じるのが不毛な訳 物事の本質を見失う可能性すらある

東洋経済オンライン / 2025年1月17日 8時30分

精神的苦痛を訴える被害者側が、現時点で自ら語ることは考えにくく、また中居さん側にも守秘義務が存在するであろうことから、被害の金銭換算は容易ではない。

もうひとつの算定基準として、被害者が仕事を含めた生活の見直しを要したことに対しての機会損失がある。しかしこちらも、被害者が「芸能関係者」と、報道において職業や経歴が明かされていない以上、算出は難しいだろう。

なお一部SNSでは、状況証拠から被害女性の氏名や前職を推測して、その人物である前提のもとで、この事案に触れている投稿もある。ただ、あくまで現状の報道ベースでは、「芸能関係者の20代女性」でしかないことに留意が必要だ。

なぜメディアは「9000万円」を使い続けるのか

このように、解決金の金額をことさらに取り上げる必要はないと考えられるが、雑誌電子版を含むメディア各社は「中居正広9000万円トラブル」を見出しに取った記事を乱発している。

しかし、それらの多くは、メインに解決金を据えた内容ではなく、また、その多寡を論じるものでもない。あくまで「事案名」としてタイトルに盛り込んでいるだけだ。

では、なぜ「9000万円」を使い続けるのか。ネットメディア編集者として10年以上の経験から考えると、「目を引く見出しだ」と感じる。まず浮かぶ理由は、「解決金の金額が一般的に知られておらず、いまなお目新しさを保っている」可能性だ。

「9000万円」そのものがニュースバリュー(報道価値)を残している場合、見出しに取ってもおかしくはない。しかしこの金額は、ここ数日で明らかになったものではない。もうすぐ初報から1カ月が経つため、単体でのバリューはさほどないと考えられる。

そこで思いつく背景が、「額面以上にインパクトのある追加情報がない」ことだ。1人でも多くの読者に読んでもらうためには、見出しからして強いものを用意する必要がある。しかしながら、それに足りるプラスアルファがなければ、いつまでもしがみつくしかない……といった事情も理解できる。

また、場合によっては「他媒体がやっているから、なんとなく」という事情もあるかもしれない。自社では手応えを感じていないが、各社が多用しているなら「ウケる可能性」があるからと、とくに考えずに採用している可能性もある。

ここまでいくつかの理由を挙げたが、それらの行き着く先は、最終的に「閲覧数が稼げるから」へ集約される。

具体的な数字を加えることで、読者の閲覧意欲をかきたてるテクニックは、「街のおいしいグルメ10選」といった記事で見たことがあるだろう。

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