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中居騒動で「示談金の多寡」を論じるのが不毛な訳 物事の本質を見失う可能性すらある

東洋経済オンライン / 2025年1月17日 8時30分

また、解決金としての多寡は別として、一般的な金銭感覚からして、9000万円は大金の部類になる。あえて書くことにより、浮世離れした印象を与え、報道ではなく「小説感覚」で読ませようという意図もあるかもしれない。

ゲスな編集者だったら、「1億円のほうがよりインパクトがあったのに」と残念がっている可能性すらある。

しかし、こうした「9000万円」見出しは、近々姿を消すだろう。その一番の理由は、本件がすでに中居氏個人の女性問題にとどまらず、編成幹部を軸にしたフジテレビのコーポレートガバナンスやコンプライアンス、そして業界慣習の抱える「旧態依然とした闇」の問題になりつつあることだ。

今回、現役アナが証言したことにより、今後さらにフジ社内からのリークが出ることは避けられないだろう。また、きっかけはフジテレビだとしても、その後に他局での類似事例が報じられるかもしれない。

そして、業界内の「あるある」だと判明すれば、芸能プロダクション各社も知らないわけがない……となり、疑惑は雪だるま式に膨らんでいく。

物事の本質を見失ってしまう

そう考えると、もはや「人気タレントのスキャンダル」にとどまらない。ゆくゆくは放送法を所管する総務省も動き出すかもしれない。

現状で村上誠一郎総務相は、「放送番組にどのようなタレントを起用するかを含め、放送事業者の自主自律を基本とする放送法の枠組みの下、放送事業者において検討し、自主的に判断されるべきもの」(1月10日の会見)との立場から、大臣としてのコメントを控えているが、もし業界全体の問題となれば、異なる対応が求められるだろう。

メディアも、より本質的な追及が必要になっている

こうした事態の変化に、「9000万円」を見出しに取るメディア各社は、どう適応していくか。

疑惑の規模が大きくなる一方で、それでもなお、「個人の解決金」を前面に押し出し続けると、「中居ひとりに押しつけている」となりかねない。

もちろん(報道が事実なのであれば)擁護しているわけではない。フジテレビや中居さんには、しかるべき対応が必要だと感じるのだが、そこだけを近視眼的に見てしまうと、物事の本質を見失ってしまうのではと心配なのだ。

確かに「9000万円」は、一時的なPV(ページビュー)につながるだろう。閲覧数の稼ぎ時だからと、乱発したくなる気持ちは、同業者としてよくわかる。しかしながら、時々刻々と状況が変化するのが、ネット社会の醍醐味だ。

状況の変化に合わせて、見出しも内容もシフトしていく。そのためには、目先のPVを追うのではなく、中長期的に見通して、時に「稼げる角度」を捨てる判断も重要だ。中居さんのスキャンダルを受けて、意識改革が求められているのは、ネットメディアも同じなのだ。

城戸 譲:ネットメディア研究家・コラムニスト・炎上ウォッチャー

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