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フジCM出稿停止「企業の判断」が間違ってない理由 懸念のあるメディアへの出稿はリスクでしかない

東洋経済オンライン / 2025年1月19日 17時10分

今回、フジの件はどうだろうか。

企業の宣伝広告の担当者は良くも悪くも、会社員である。しかも、日本では横並びを美徳とする。「メディア企業の不祥事がありました。『消費者から、なぜスポンサーを続けているのか』って質問されたらどう答えよう。しかも、大手企業が次々とCMを差し止めている」とわかったら、慎重派なスポンサーは同様にCMを差し止める判断をくだすだろう。

そして、フジテレビにとって真に恐ろしいのは、差し替えではない。次の契約タイミングまでに改善が見受けられなかったとスポンサーが判断した場合に、「広告の停止」という措置も十分ありうることだ。

とくに、「こだわりはないが、一定割合はフジテレビに」といった温度感で出稿し続けていた場合は、停止の口実を与えることにほかならない。

他局への振替えもあるかもしれないが、それよりも一つのきっかけになって、SNSなどネットメディアへの出稿を増やすかもしれない。

さらなる影響が広がるか

なお、これはフジだけの問題だろうか。これから、もしかすると他のテレビ局で同様の嫌疑が報じられるかもしれない。また、それは深刻で業界全体の宿痾(しゅくあ)と化すかもしれない。

さらにネットメディアも同様に報じられたらどうだろうか。これは、他局やネットメディアで同様の事態が生じている、といいたいわけではない。あくまで可能性の問題を指摘している。

となると、結論は凡庸なものになる。

まず、怪しげな行動、悪しき行動をする社員はどんな組織にもいる。その性悪説に立ち、問題はそれらを指摘・告発できる体制があるかどうかだ。部門と部門で牽制しあうとともに、内部からの告発を受ける仕組みがなければならない。企業は監査役がその立場を担う。内部からの告発を受け、監査役は企業の浄化を試みる。

小さなことだ、よくあることだ、と放置すると、積年のあとに大変な事態になり企業の存続に関わる。だから内部告発を積極的に受けて対応することは、むしろ実利的なことである。これは商道徳とか商倫理といった難しい言葉ではなく、たんに実益につながる。

こう書くと私はフジが悪いことをやっていた、と断言していると思われるだろう。しかし、そうではない。まだ疑惑段階。疑わしくは罰せず、が基本だ。

むしろ、フジには徹底的に透明に、そしてめちゃくちゃ厳しい弁護士らを第三者委員会として採用し、異常で執拗なほどに調査をしたほうがいいのではないか。どのような結果が出てくるにせよ、それこそが、中長期的なスポンサーの意向にも合致すると、私は思うのだ。

「面白くなければテレビじゃない」はいったん忘れて、「あらゆるセクションの、あらゆる階層の社員にヒアリングして、徹底的にやりすぎでしょ」と、真面目すぎるくらいの調査をして、信頼の回復に努めてほしいものだ。

【もっと読む】中居正広CM削除「ソフトバンクの判断」が正しい訳 「示談してたのに…」は企業には一切関係ない では、中居正広氏のCMをソフトバンクがいち早く削除したことについて、コンサルタントの立場から坂口孝則氏が詳細に解説している。

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坂口 孝則:未来調達研究所

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