「中央銀行」が金利を操作するのはなんのためか 雇用や経済成長に多大な影響を与える金利の話
東洋経済オンライン / 2025年1月20日 11時0分
私たちが生きている、かつてないほど豊かなこの現代社会を可能にしたのは、経済の力だ。そして、文明の歴史は経済発展の歴史でもある。では、その経済を、経済学者たちはどのように考えてきたのか。現代の経済学者は何に取り組んでいるのだろうか。
農耕革命から人工知能まで、経済や経済学の発展の歴史をわかりやすく解説する、2024年12月に刊行された『読みだしたら止まらない 超凝縮 人類と経済学全史』より、一部抜粋、編集のうえ、お届けする。
すさまじいハイパーインフレ
1980年代には経済政策当局者のインフレ抑制策に着実な進歩が見られた。
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人類はそれ以前、インフレの最もはげしい形態であるハイパーインフレーションを経験していた。
第一次世界大戦後のドイツと同じように、第二次世界大戦後のハンガリーで、とてつもないハイパーインフレが発生した。
年間のインフレ率は一時、41京9000兆%にも達し、ハンガリー政府は1垓(がい=10の20乗)紙幣の発行を余儀なくされた。
1989年、アルゼンチンでは物価が毎月2倍上昇し、やがて紙幣の供給途絶が発表される事態となった。紙幣を刷りすぎて、紙を使い果たしてしまったのだ。
ロバート・ムガベ政権下のジンバブエで発生したハイパーインフレでは、毎日、物価が2倍上昇した。
そのせいで大手銀行のATM(現金自動預払機)で、「データ・オーバーフロー・エラー」が生じるということも起こった。引き出し額の数字の桁が増えすぎて、処理できなくなったことが原因だった。
ハイパーインフレのリスクを回避するため、当初は通貨と金の交換比率を固定する金本位制の採用が進んだ。しかしこれは得策ではないことがやがてわかった。
世界の金の採掘のペースと、金本位制を導入した国の経済成長のペースとが釣り合う保証はどこにもなかったからだ。世界のどこかで広大な金鉱が発見されたとき、わたしたちは自国の通貨の価値が下がることを望むだろうか。
1970年代初頭に金本位制が終焉を迎えると、各国は人口の増加や生活水準の向上に合わせて、通貨の供給量を増やせるようになった。
また主要経済大国は互いの通貨のつながりも切り離し始め、固定為替レートから、通貨の需給関係で為替レートが決まる変動為替レートへと切り替えた。
中央銀行への政治的な干渉
しかし中央銀行が政治家の支配下に置かれていた時代には、インフレの管理で考慮されたのは経済的な要素だけではなかった。
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