「中央銀行」が金利を操作するのはなんのためか 雇用や経済成長に多大な影響を与える金利の話
東洋経済オンライン / 2025年1月20日 11時0分
政権は選挙が近づくと、にわか景気を作り出す誘惑に駆られがちだった。その結果、選挙後には景気が悪化することが多かった。
政治家たちはそのようなにわか景気のおかげで選挙に勝てたが、多くの一般の労働者たちは選挙後の不況のせいで職を失った。
景気の推移を表したグラフを見れば選挙があった年がわかるほど、この問題は顕著だった。
戦後の数十年にわたり、米国ではたいてい選挙の翌年の経済成長率が選挙の年の経済成長率を下回っている。同様のパターンはヨーロッパの国々でも見られた。
金利の設定への政治的な干渉はときに直接的に行われたが、目立たない形で行われることもあった。
1972年、インフレの加速に直面した米国のリチャード・ニクソン大統領は、連邦準備制度理事会が金利を引き上げて経済を鈍化させるのではないかという懸念を抱いた。
このときニクソンは、連邦準備制度理事会に圧力をかけようとして、連邦準備制度理事会議長のアーサー・バーンズが給与の50%引き上げを要求しているという虚偽の情報を流した。
このような「政治的な景気循環」が明るみに出たことで、状況は変わり始めた。財政政策は引き続き、選挙で選ばれた政治家によって決められたが、金融政策は中央銀行の独自の判断で実施されるようになった。
先進国では、1980年代を通じて、中央銀行の独立性が着実に増していった。高所得国の中央銀行は、一般の公務員と同等の自律性しか持たない機関から、裁判官に与えられているのと同じ独立性を持った機関へと、一歩一歩近づいていった。
インフレ目標の導入と短期金利の操作
中央銀行は独立性を強めただけではなかった。インフレを直接、目標にし始めた。
1970年代と80年代、中央銀行は中間的な指標(通貨集計量や信用集計量など)を目標にしていた。しかししだいにインフレと通貨供給量との関係は弾力的なものにできるという認識が広まっていった。
ある中央銀行総裁がいらだたしげにいったように、「われわれが通貨集計量を捨てたわけではない。通貨集計量がわれわれを捨てたのだ」った。
世界で初めて中央銀行に明確なインフレ目標を設定させた国は、ニュージーランドだった。
1990年、ニュージーランド政府は中央銀行にインフレ率を0~2%の範囲内に抑えるよう求めた。ニュージーランドではそれまで何年も2桁台のインフレが続いていて、これはそのような極端な物価の不安定さを解消するために講じられた措置だった。
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