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「中央銀行」が金利を操作するのはなんのためか 雇用や経済成長に多大な影響を与える金利の話

東洋経済オンライン / 2025年1月20日 11時0分

ほかの国々もすぐに追随した。カナダでは1991年、英国では1992年、オーストラリアでは1993年、それぞれインフレ目標が導入された。

今日では、ほとんどの中央銀行が2%前後のインフレ目標を導入している。2%前後を目標にするのは、それが物価を安定させると同時にデフレを回避できるインフレ率水準と考えられているからだ。

高インフレは物価を不安定にさせるが、デフレも問題を招く。デフレ下では、来年になればもっと安く買えるという期待から、家計が大きな買い物を控えるせいで、消費が鈍ってしまうことがある。

中央銀行が行っているのは、具体的には短期金利の操作だ。中央銀行は短期金利の操作を通じて、民間銀行が家計や企業にお金を貸すときの長期金利に影響を与えている。

なぜ金利が経済に多大な影響を及ぼすのか。金利とは、将来まで待たずに今、購入することの「代償」だと考えるとわかりやすい。

金利が低ければ、企業や個人は計画を実行に移そうとするインセンティブを与えられる。その計画は、新しい事務所を開くことかもしれないし、家を購入することかもしれない。金利の低さは変化を引き起こす。

逆に、金利が高いと、借金の魅力は薄れる。人々は今はがまんして、あとで買おうとするようになるので、経済活動は停滞する。

中央銀行にとって、金利は自動車のブレーキとアクセルのようなものだ。適切なタイミングで正しいペダルを踏めば、目的地に滞りなく到達することができる。

インフレ率だけを目標にしている中央銀行もあるが、一方で、失業率など、別の指標も目標にしている中央銀行もある。

ただ結果的には、両者に大差はない。ビル・フィリップス(1949年に送水ポンプを使って経済の仕組みを表す水理模型を考案した人物)の研究により、短期的にはインフレと失業のあいだに強い結びつきがあることがわかっている。

したがって、中央銀行がインフレ率の達成に重点を置けば、おのずと雇用や経済成長にも影響を与えることになる。目的は、熱くなりすぎも、冷めすぎもしない経済状態、いわゆる「適温経済(ゴルディロックス経済)」を維持することにある。

中央銀行はうまくやっているのか?

では、インフレ目標や中央銀行の独立は成功しているのか。インフレに関しては、答えはイエスだ。

1970年代のオイルショック後、米国のインフレ率は10年にわたり、6%を超え、ピーク時には14%(1980年)に達した。それが1990年代から2000年代にかけては低く抑えられた。

同様のことは英国と日本でも起きている。どちらの国でも1970年代にはインフレ率が最大で20% を超えた。それがやはり1990年代から2000年代にかけては、低い水準で安定した。

中央銀行にとって悩ましいのは、金利は人々の将来の行動に影響を及ぼすものなので、金融政策はつねに将来の予測にもとづくものになるという点だ。

連邦準備制度理事会議長の表現を借りれば、中央銀行はパーティが盛り上がってきたタイミングで、カクテルがなみなみと入ったパンチボウルをさっとテーブルから下げなくてはならない。

21世紀に入ると、適切なバランスを取ろうとする中央銀行はまた別の難題を突きつけられることになる。

(翻訳:黒輪篤嗣)

アンドリュー・リー:オーストラリア国立大学経済学部元教授、オーストラリア代議院(下院)議員

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