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入念に準備したプレゼンはなぜ失敗するのか? 現場では「準備したことを忘れる」ことが大事

東洋経済オンライン / 2025年1月20日 8時20分

もちろんその場で何もせずに知覚することは難易度が高いので、今どんな気分なのかを一人ずつ語ってもらう、いわゆる「チェックイン」という対話を通じて会議をスタートすることができれば、その日の「場の空気」をより知覚することができるでしょう。

いずれにせよ、相手は機械ではなく、生身の感情のある人間です。だとするならば、それぞれが今日この場に持ち込んだ感情を認知することから始めることが重要です。

ここで大事なことは、「目的」と「知識」を手放すということです。「本部長たちに数字の合意を取るぞ」という強い目的意識や、「この本部長はこういう性格だ」という知識は、知覚を歪める可能性があります。

それらをいったん手放し、目の前の人物に対して視覚や聴覚のリソースをフルに向けるのです。その結果、表情の変化や、声のトーン、話すペースから、言葉以上の何かのメッセージを受け取ることができるでしょう。

目的を手放すからこそ、目的に近づくことができる

もちろん、目的をいったん手放したところで、目的から解放されることはありません。この場で本部長たちから合意を取り付けることのミッションは残り続けます。

しかし、参加者に最大限の関心を持つという姿勢は、おそらく本部長たちに伝わるはずです。「この経営企画部の担当者は、自分たちに関心を持ち、そして対話をする準備がある」と。

言うまでもなく、その姿勢だけで目的が実現できるような単純なことではないでしょう。営業戦略とは違う話に脱線して貴重な時間をロスするかもしれない。

しかし、目的ばかりを考えて、目の前にある存在を手段化するような態度よりは、最終的によっぽど前向きな議論になるはずです。

「目的に最短距離で!」という目的至上主義の姿勢は遠回りの可能性があります。むしろ、目的を手放すからこそ、かえって目的に近づくことができるのです。

荒木 博行:株式会社学びデザイン代表取締役

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