「つぶれる百貨店」「生き残る百貨店」の明確な違い インバウンド需要の恩恵があるのはごく少数
東洋経済オンライン / 2025年1月20日 8時30分
2024年も百貨店業界では、閉店や経営破綻のニュースがいくつもあった。記憶に残っている事例を挙げれば、松江市の一畑百貨店本店や岐阜市の高島屋岐阜店が閉店。これによって島根県、岐阜県が山形県、徳島県に次ぐ、「百貨店なし県」となったことで全国的にも話題となった。
そのほか中堅都市からは、尾道(広島)の福屋、弘前(青森)の中三なども消えた。閉店ではないが、2023年末に事業譲渡による再生、となった佐賀玉屋は、新たな複合商業施設への建て替えに向けて、一時閉鎖となった。
また、鹿児島を中心として南九州に多くの拠点を持つ山形屋グループは、事業再生ADR手続きが成立し、スーパーを含めたグループ再構築が始まっている。コロナが終わっても、地方都市では百貨店が減り続けている。
名古屋駅前の百貨店の閉店はなぜ?
ところが、大都市においては、百貨店はインバウンド需要の復活や富裕層の旺盛な消費の恩恵を受けて、売り上げが大きく伸びており、大手は過去最高売上を達成するなど絶好調である。
インバウンドの恩恵に乏しく、富裕層の厚みもない地方においては、コロナ前の水準に回復していない地域が多く、それが地方百貨店の閉店につながっている。
そうした中、愛知県の名古屋駅前に位置する名鉄百貨店本店が2026年春に閉店すると報じられた。三大都市圏の名古屋の百貨店が閉店というちょっと意外な話であり、ネットでも話題になっていた。何が起こっているのか、少し見てみることにしよう。
日本百貨店協会の資料によると、名古屋地区の百貨店の売上高は2023年度は、すでにコロナ前比(2019年度)で11.4%増加、2024年に入っても4~6月は+14.1%、7~9月も+5.3%と増収を維持しており、10月は▲1.2%となったが、11月は+9.8%に回復し、地域全体ではおおむね好調な状態をキープしているといっていいだろう。
ただ、店舗ごとに個別にみると、店によってかなり勢いが違う。次の図表は名古屋地区の百貨店4店舗の売上高推移を示したものだ。地域トップのJR名古屋タカシマヤと2位松坂屋名古屋店が大きく伸ばしているのに、3位名古屋三越栄店、4位名鉄百貨店本店はコロナ前にも戻っていない。
その背景は、大都市百貨店の好調を支えているのが、インバウンドと富裕層消費であることから、その恩恵は企業ごとに偏りが出る、ということに尽きるだろう。
JR名古屋タカシマヤにインバウンドが集中
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