「つぶれる百貨店」「生き残る百貨店」の明確な違い インバウンド需要の恩恵があるのはごく少数
東洋経済オンライン / 2025年1月20日 8時30分
インバウンド客の動線は、ゴールデンルートと呼ばれる東京、大阪を新幹線で移動しつつ、途中で分散するというものだ。名古屋は主に高山、白川郷方面への乗り換え拠点という傾向もあるらしい。中部国際空港セントレアという入り口ルートはあるものの、全体からすればその比率は低いようで、どうしても新幹線名古屋駅がインバウンドの玄関となる。
そのうえ、インバウンド客のデスティネーションではないため、市内を回遊するという動線は細い。結果、新幹線駅直結のJR名古屋タカシマヤにインバウンドは集中しており、2024年に売上高2000億円越えを達成しているのだが、インバウンド向け売上(免税売上)が倍増したことが大いに貢献しているのだという。
JR名古屋タカシマヤは、2017年に隣接して新設されたJRゲートタワーに拡張。中部地方最大であったかつての地域一番店、松坂屋名古屋店を上回る売り場に拡張済みであり、一番店としての地位を確固たるものにしたといえるだろう。
JR名古屋タカシマヤの後塵を拝するようになった松坂屋名古屋店は、古くからの名古屋商業の中心地・栄地区にあるため、インバウンド動線から離れていて分が悪い。
そもそも、大都市にインバウンド需要が集中し……という言い方がされているが、その取り込みに成功しているのは、限られた都市の限られた地区の百貨店に偏っているのである。
大手百貨店が受けているインバウンドの恩恵
次の表は、大手百貨店J.フロント リテイリング、三越伊勢丹、エイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)の店舗別インバウンド売上(免税売上)実績を抽出したものだ(高島屋は非開示)。Jフロントでは、大丸心斎橋が実績トップであり、京都、札幌が次ぎ、売上高全体に対する免税売上高の占める割合も43.4%、23.3%、16.3%と高い。
松坂屋名古屋店は、売上高では年間1300億円超の基幹店だが、免税売上高は59億円、その占める割合は6%ほどであり、インバウンドの恩恵は思ったほどではない。
JR名古屋タカシマヤは数値を公表していないが、インバウンドの貢献度が大きいこと、昨年から倍増したことはコメントしている。名古屋のインバウンドにおいて、松坂屋名古屋店がJR名古屋タカシマヤに追いつく可能性はほとんどないだろう。
せっかくなので、他の百貨店の様子もみてみると、インバウンドの偏在性は明らかだ。三越伊勢丹では、基幹店の伊勢丹新宿店がインバウンド売上が最大で、その占める割合も19%と高いのだが、売上高で新宿に次ぐ日本橋三越本店はそうでもない。2位は、半期で240億円以上を売り、免税割合が4割を超える銀座三越である。
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