医師も早合点「認知症は悪化していく」は間違い 治せる認知症だってあることを知っておこう
東洋経済オンライン / 2025年1月21日 7時0分
超高齢社会に突入している日本において、「認知症」は多くの人にとってすぐそばにある話となりました。中高年だけでなく幅広い世代が「認知症にだけはなりたくない」と恐れています。
一方で、多くの人の認知症観は、実際と大きくズレていると指摘するのは、『早合点認知症』の著者で、認知症専門医の内田直樹さん。どのような誤解があるのでしょうか。
「治せる認知症」があることを知っておこう!
私は偏見や誤解を背景に生まれた認知症観と過大な心配をまさに「早合点認知症」と名付けています。
認知症の診断を受けると、その後、状態が悪化した場合に、「認知症だから仕方ない」と諦められたり、出ている「困った症状」を薬でなんとかする(鎮静する)ことだけが考えられたりするケースが現状は多いのではないかと危惧しています。
認知症を誤解していて、とても大切なことを見落としていると、そうなります。命にかかわる場合もあることなので、私はこうした現状を「早合点認知症」の残念な実例として、皆さんに知っておいていただきたいと思っております。
このようなケースは、治療ができる認知症なのに、認知症だから仕方がない、治療法はないと早合点されている状態です。みなさんが、「そういうことがある」と知識をもてば防げることですので、解説します。
多くの場合、認知症の進行はゆるやかで、急に悪化したり、昨日と今日が大きく違ったり、朝と晩で違ったりすることはありません。
もし急な変化があったら、「せん妄」という意識障害や、「うつ病」などの精神疾患が重なっていたり、治療ができる認知機能障害が重なっていたりして認知症の状態が悪化した可能性を考えてみるべきです。
認知症は進行性だから悪化しても仕方がないと諦めるのも、出現した症状にだけ対処するのもNG。まずは症状が変化した原因に目を向けることが大事です。
認知症の原因となる脳の障害を起こす病気は70以上もあります。このなかには、治療ができるものが含まれます。そして、治療ができるものでも、医療へのアクセスが遅れると、治療をしても認知症の状態の改善が難しくなるものもあります。
また、1人の人に4大認知症(「アルツハイマー型」「血管性」「レビー小体型」「前頭側頭型」)のいずれかと、治せる病気が原因の認知症が重なっていることはよくあることです。4大認知症のうち2つが重なっていることもあります。
ですから認知症はグラデーションをもっていて、わかりにくいものだと言うのです。わからなさに対して謙虚なまなざしで、いろいろな可能性を考慮する必要がある、と言えます。
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