トランプ政権発足、対峙する石破首相に今必要な事 フラット化の時代から「逆戻り」する世界
東洋経済オンライン / 2025年1月21日 10時0分
フラット化の時代の柱だった市場原理を重視する路線は、国家の介入拡大に転換しつつある。
そうした状況下で第2次トランプ政権が「アメリカを再び偉大に」(MAGA)を掲げて動き出す。中国だけでなく同盟国にも高関税を課すことをテコにして、さまざまなディール(取引)を繰り広げるだろう。不法移民の強制送還や国境の壁建設も進みそうだ。温暖化防止の枠組みであるパリ協定からの離脱も決定。温暖化防止に取り組んできた関係者に失望が広がっている。
グローバル化に逆行する「非フラット化」ともいえる政策が、はたしてどこまで続くか。高関税によるインフレの進行、移民送還による人手不足と人件費の高騰……。トランプの政策が遠からず行き詰まるのは明らかだ。
そのときに外交や経済政策はどう修正されるのか。自国中心主義から国際協調路線に戻るのか。それが世界の潮流の変化――非フラット化が続くのかフラット化に戻るのか――にも関わってくる。
石破政権に求められる「大局観」
そして日本。石破茂政権は昨年の総選挙で少数与党となり、政局運営は不安定化している。一方で、与野党は「熟議と公開」という考え方から、政策で歩み寄る動きも出ている。与野党の対立が激しくなっているアメリカや韓国などとは様相を異にしている。
外交面では、石破政権は日米同盟を基軸にロシアや中国に対応していく考えだ。ただ、バイデン氏が欧州各国や日本や韓国、オーストラリアなどの同盟国を重視し、多国間の枠組みを作ってロシアや中国に向き合ったのに対して、トランプ氏は二国間のディール外交を進めるだろう。日本の対米投資拡大や防衛費増額を要求してきた場合、石破首相がどう切り返すかが勝負どころだ。
その際、石破氏に求められるのは、経済や防衛などの具体的なディールの材料だけではなく大局観である。民主主義や市場経済を推進する立場からトランプ氏らに働きかけていくのか、非フラット化の世界で強権国家の専横を許し、民主主義を後退させるのかという判断である。岩屋毅外相は石破政権の外交方針について「分断と対立から協調と融和だ」と語る。だが「言うは易し、行うは難し」である。
政権の足元が脆弱な中で、石破首相の覚悟と発信力が試される。
星 浩:政治ジャーナリスト
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