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「AIで復活の故人が喋る」不気味の谷より心配な事 日本で始動したAI故人ビジネスの実情を追う

東洋経済オンライン / 2025年1月21日 9時40分

現在は無料で提供しており、Revibotで生成した映像を組み込むといった連携も選べる。登録されたVR空間は2025年1月時点で約360件。ゆっくりとしたペースで増えているという。

インタラクティブはあえてオフ

とはいえ、時間がすべてを解決してくれるわけではない。悪目立ちして拒絶されたら壁を越えるどころの話ではなくなる。そこで同社は宗教学や倫理学、AIガバナンスなどの専門家と論議するために社内に倫理委員会を設置。そこでいくつかの制約をRevibotの輪郭に組み込むことにした。

生成したAI故人を公開する場を葬儀会場や「風の霊」、提携する納骨堂内に限定したことと、対話機能をあえて省いたことが象徴的だ。小川氏は「技術的には双方向のやりとりができる状態で、どこでも公開できるかたちで納品することも可能ですが、AIのリスクを考えて判断しました」という。

双方向のやりとりは語弊や誤解を生みやすい。意図的な改変を許せば、遺産相続で有利な発言を捏造するなどの悪用も簡単にできる。まずは固定した映像として納品するかたちをとり、発言を調整したい場合は同社への依頼を通して対応すると決めた。

また、AI故人をいたずらに半永久的な存在にしないことも意識したという。AI故人を保存するサーバーの使用期限は、1年や2年の短期契約も選べるようにしている。「死別の悲しみを克服するなかで、故人様を忘れることが大事なケースもありますから」(小川氏)。

いわば、時空的にも心情的にもAI故人の在り方をコントロール下に置くことで、何が起きるかわからない怖さを徹底的に抑える戦略といえる。

しかし怖さはまだ残る。本人と見分けがつかないAI故人は、前情報がないと受け取る側が故人とAI故人を判断しきれない。生成されたAI故人がどれだけ安全だとしても、受け取る側には騙される怖さがつきまとう。

冒頭で紹介した男性のAI故人映像は通夜式で初めて披露されたと先に書いた。その日はAI生成された故人であることを説明したうえで公開したが、翌日の葬儀告別式では、依頼者の意向であえて詳細を触れずに映像を流してみたそうだ。

すると会葬者の反応に違いが出た。祭壇の遺影写真が動画に切り替わったとき、会葬者から驚きの声が上がったのは変わらない。しかし、「AIという文言を入れないほうがより感動されていたというようなお話は聞いております」(小川氏)という。

告別式後に会葬者に尋ねると、生前に録画した映像を流していると捉えていた人が多かった。当然だ。後から事情を知らされたとき、騙されたという思いを抱いた人も少なからずいたのではないだろうか。

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