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「AIで復活の故人が喋る」不気味の谷より心配な事 日本で始動したAI故人ビジネスの実情を追う

東洋経済オンライン / 2025年1月21日 9時40分

2019年年末の紅白歌合戦で披露された「AI美空ひばり」は本人の歌唱テクニックを忠実に再現しており、その品質は十分に鑑賞にたえうるものだった。しかし、曲間の「お久しぶりです。あなたのことをずっと見ていましたよ」というせりふが評価を著しく下げてしまったように思う。

悪意はない。それでも人を騙せるだけの品質でAI故人が作れるようになった現在は、本物と生成物の区別がつけられるように提供する側が細心の注意を向けたほうがよいだろう。これは不気味の谷を越えた先にある問題といえる。

ニッチをキワモノにしないために

残された側とAI故人を提供する側が手を加えていいライン、受け取り側に説明すべきラインの解像度は、おそらく場数を踏まないと上がらない。

故人が別れの手紙を残したとしても、声量のバランスや微笑むポイントなどの演出をどこまで許容するかといった問題もあるし、AIが解釈した故人の振る舞いの正当性を誰がどうジャッジするのかといった問題もある。また、AI生成される本人の意志確認問題も今後より重要になってくるだろう。

デジタル故人がニッチながらも社会で居場所を作っていくには、そういった問題を吸い上げて、論議して、コンセンサスを作っていく仕組みが欠かせないだろう。

小川氏は、社内の倫理委員会をやがては業界全体に広げていく構想もあるという。2040年、AI生成技術は桁違いの進化を遂げていそうだ。しかし、故人を取り巻く倫理面はどうか? ニッチをキワモノとせず、ひとつの選択肢として大切に育てていく未来が見てみたい。

古田 雄介:フリーランスライター

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