「フジテレビ問題」の根源は"経営不在"にある 2010年代から「一人負け」に陥ってしまった
東洋経済オンライン / 2025年1月21日 9時20分
売上高で見ると1位から2位グループの上位に下がったように見える。だがテレビ局の屋台骨である放送収入で見ると、状況はさらに悪化していた。
2018年度から2023年度の放送収入だけを取り出して比べると、売上高では2位グループの上位にいたのが、テレビ朝日とTBSテレビにも突き放されて単独4位に落ちている。こうなると、2024年度は売上高でも4位に転落するかもしれない。広告主がCMを差し替えるだけでなく本格的に引き上げはじめたら、そうなってしまうだろう。
なぜ売上高も放送収入も急減したのか。それは、フジテレビには「経営」が存在しないからだ。
驚くべきことに、フジテレビは中期経営計画を発表していなかった。2023年5月にようやく発表したが9ページしかない薄い中身で、「拡がる」とビジョンめいた言葉はあるものの何をしたいか不明な内容。「経営とは未来を指し示すことである」とよく言われるが、何も指し示していない。
2010年代後半以降、危機感を高めた他のキー局は明快なビジョンを打ち出し、社員にとっても株主にとっても会社としてどんな方向へ向かうのかはっきりわかるようになっていた。フジテレビだけ何も示さない。つまり、「経営」と呼べるものが存在しない企業なのだ。
90年代までは、「経営」が必要なかったのかもしれない。毎日番組を送りだしていれば、大きな売り上げを獲得できたし成長もできた。テレビビジネス市場全体が上向きだったからだ。その中で断トツ1位だったフジテレビは、ドラマもバラエティもスポーツも、報道やワイドショーでさえ、とにかく視聴率が取れて何をやっても当たるテレビ局だった。
2000年代に入ってテレビ広告市場がもう伸びなくなり2008年のリーマンショックで市場が激しく縮小した。そんな中でもフジテレビはトップだったが、2010年代になると様相が変わってしまった。
「経営」に取り組もうとしなかった
だがそれでもフジテレビは何も変えなかったし、「経営」に取り組もうともしなかった。社長は数年置きに次々代わって、業績ダウンの責任を取ったようで実は、80〜90年代の黄金時代を築いた世代で回していただけだった。
変わらなかったのは当然で、本当のトップの座は同じ人物が占めてきた。現在は相談役に退いたように見える日枝久氏が君臨し続けている。
日枝氏は、1980年代のフジテレビの大躍進に、創業一族の鹿内春雄氏を支え貢献した。そして早世した春雄氏に代わった義弟の宏明氏がワンマン経営に走るとクーデターを起こして実権を握った。その後もフジテレビの断トツポジションを築いたことには功績があると言っていいだろう。
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