「Xへの不適切投稿」で見えてくる看護師の"問題" 「医師や患者への不満」をつづった裏にあるもの
東洋経済オンライン / 2025年1月22日 11時0分
患者から叩かれるなどの暴力を受ける、セクハラを受ける、患者家族から心ない暴言を浴びせられるといったことも、筆者が知る現場ではよく聞く話です。
しかし看護師は、そのようなときにも自身に向けられた怒りを受け入れ、我慢するといった対応が求められてきました。
このように、看護師の仕事は、感情の表出や抑制をコントロールすることが労働の大きな要素となる「感情労働」の1つとされているのです。感情労働は、人々と面と向かって、あるいは声を通しての接触があり、仕事のなかで感情が重要な要素となっているものを指し、感情が商品価値を持つとされます。
看護師には、「患者が亡くなったときに泣いてはいけない」「患者に腹が立っても怒りを示してはならない」といった職業倫理があり、自身が持つ感情とは別の「適切な感情」が求められます。
また、キャリア教育上そのような評価はないものの、先輩からは「泣かなくなったら一人前」と陰で評価されることもあります。その結果、自分の感情を押し殺して仕事をする看護師もいて、バーンアウト(燃え尽き症候群)の要因の1つとなっています。
いろいろと書きましたが、このような状況下で看護師は日々の業務と向き合っているのです。
もちろん、看護師にとって患者が回復することは大きな喜びであり、仕事を続けるモチベーションになっていることもまた事実です。さらに、病棟で経験した看護実践を携えて、専門性を獲得し、さまざまなフィールドで活躍する看護師も増えています。
知ってほしい「看護師が抱える問題」
今回投稿された内容を、決して擁護するわけではありません。しかるべき対処が必要になる問題だと筆者は考えます。
しかし、これを機に看護師が抱える問題についても、多くの人たちに知ってもらいたいと感じます。
超高齢社会を迎え、2040年問題(65歳以上の高齢者が国民の3割を占める)が迫りくる現在、病気を抱えながらも最期まで地域で暮らせる社会の実現に向けて、看護師も医療従事者の一専門職として、重要な役割を担っています。
社会がそのことを理解すれば、健康で長生きすることが重視される時代のなかで、健康増進・健康回復・疾病とともに生きていく、といったことがより可能になるのではないでしょうか。
高山 真由子:N direction代表、看護ジャーナリスト
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