わずか3年で3割値上げ「大戸屋ランチ」変化の実情 物価高の時代、庶民の味方は今もコスパ最強だ
東洋経済オンライン / 2025年1月22日 8時50分
牛丼チェーンは「牛丼」という1つのアイテムに絞ることでオペレーションや仕入れを効率化して低価格を実現しているが、一方の大戸屋の定食は常時約40品のバリエーション豊かなラインナップで、しかも店内調理を取り入れた本格派。
とんでもない企業努力があり、これによるコスパの良さこそが多くの人に支持されるゆえんだ。
サービスも簡素化、しかしお客にもメリット大
値上げと同時にサービスの簡素化も進んでいる。値段も上げて、サービスも簡素化すると満足度が下がるのでは?と思いきや、お客と店、双方にとってメリットのある形に着地している部分も。
以前の大戸屋はフルサービスだった。一部店舗では入店時にレジで注文を済ませてから着席していたが、多くの店舗ではまず着席してメニューを見て、スタッフを呼んで注文する。
なぜかコールボタンは頑として置かず、スタッフは常にオーダー待ちのお客を注視していなければならないし、お客はタイミングを見計らって「すみません!」と声をかけなくてはならなかった。
現在は客席のタブレット注文が主流となっている。お客とスタッフ双方が気をもむことがなくなったのは利点だ。大戸屋の接客に人間的なコミュニケーションを求めているお客はほぼいないと思うので、こういう効率化は進めて然るべきだ。
「どうせ全部冷凍なんでしょ」私が聞いたお客の衝撃の一言
安いのは消費者としては嬉しい。しかし、いつまでも安価で提供しているのは健全とは言えない。企業としては適正価格で商品を提供し、然るべき利益を上げていくことが求められる。
その点、大戸屋は他の飲食チェーンと比べて提供している商品クオリティに対して価格が安すぎると筆者は感じている。大戸屋が1000円の壁を越えていける日は来るのか。
コロワイド傘下になったことでセントラルキッチンの活用など、効率化は進んでいるが、大戸屋の原点は店内調理。例えば「チキンかあさん煮」は、オーダーが入ってから鶏を揚げ、そこから鍋で煮詰める。
牛丼のように仕込み済みのものを盛り付けるだけではない。チェーン店とは思えない調理工程が多くあり、これで価格が1000円を切っている。
こうした手間ひまをかけて美味しさを追求しているのが大戸屋の最大の価値だ。アルバイトはホールもフルサービスで大変だったが、キッチンもたくさんの調理工程に、非常に多いメニュー数をさばくのが大変で、すぐに辞める人も少なくなかった。
そうした強みがうまく消費者に伝わっていないことが、大戸屋の客単価上昇を妨げているのではないかと考える。
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