日本の漁業が「自滅」に向かっていく根本原因 資源管理制度の不備が原因で魚はもっと高額に…
東洋経済オンライン / 2025年1月23日 9時0分
景気が悪いという外部要因のせいにする。しかし周りを見渡せば、同じ環境下で好成績を出している企業がたくさんあることを考えると、経営陣の責任が追及されます。ビジネスの世界では当たり前のことで、世界全体では水産業は「成長産業」です。ただし、その前提となるのは資源がサステナブルになっていることです。
景気が悪い(例:海水温の上昇や外国の影響など)という同じ環境下であっても、好成績を維持している企業(例:魚の資源が減っておらず、漁獲量も維持している国々)がたくさんあるのです。1企業(日本)だけでなく、北欧・北米・オセアニアをはじめ他国と比較すると、その問題点がはっきり出ます。
ところが日本では、世界中の水産業の状況を客観的に見ずに、近隣だけのとても狭い範囲であれこれ責任転嫁したり、自画自賛したりしてしまう傾向があります。外国の成功例を「日本は事情が違う」と言って受け入れないのでは、間違った処方箋で薬を飲んでいるのと同じで良くなるはずがありません。しかしそれが、残念ながら全国で魚が獲れなくなっているわが国の実態なのです。
「自主管理」という今までのやり方でよいという耳触りがいい言葉の代償は、全国で魚が獲れなくなって起きている地域社会の崩壊です。しかし漁業者の方々も何かおかしいことに気づき始めました。
それ本当に増えていますか?
ある地域や県でサケが獲れた、スルメイカが豊漁だった、などと報道されることがあります。全国では漁獲量が大きく減っていても、地域によって今年は獲れたという事例があります。個々の事象は事実としても、ミクロではなく、マクロで判断することがとても重要です。
同じ魚種でもがA県で豊漁でもB県では不漁といったケースがあります。これは同じ資源の回遊経路による影響にすぎないことが多いので、あくまでも同じ資源の全体量で考えないと誤解が起きてしまいます。
また漁獲量が激減してしまっているのに、翌年に漁獲量が増加するとその数量に対して「前年比何割増」とか「何倍」と報道されることがあります。これも数字自体は合っていても、実質的な量はまだまだ少ない場合がほとんどです。「豊漁」「大漁」といった言葉の響きはいいかもしれません。しかしながら根本的に、資源管理制度の不備で何もよくなっていないケースばかりです。
昨年(2024年)はサンマの漁獲量が年間約4万トンとなり、前年比58%増と報じられましたがつい10年ほど前かそれ以前の20~30万トンという漁獲量に比べればたいしたことはなく、大漁にはほぼ遠いのです。マスコミも少しずつ、過去に比べて解説するケースが出てきています。そのためにも、本質的なことが理解されるまで、繰り返し発信し続けます。
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