日本の漁業が「自滅」に向かっていく根本原因 資源管理制度の不備が原因で魚はもっと高額に…
東洋経済オンライン / 2025年1月23日 9時0分
サケ、スルメイカ、シシャモ、ハタハタをはじめ、魚が獲れないという報道を耳にしない年はありません。全国主要漁港の上位10港における水揚げ数量の合計は前年比9%減となっており、2024年度の水揚げ量は、同じ形で統計を取り始めた1956年以来の過去最低数量をさらに下回る見通しです。しかも恐るべきことに、過去最低記録の更新は毎年続いてしまっています。
世界の水産物生産量(漁業+養殖)の日本の順位は、2022年時点で12位まで下がり続けています。1970年代から80年代の約20年にわたって世界1位を長年維持してきたかつての姿はありません。一方で、対照的に世界全体の水産物生産量は、毎年過去最高を更新し続けています。
魚の価格がさらに高くなっていく
こうした状況は、すでにわれわれが日常食べている魚の供給や価格にも大きく影響しています。輸入に関しては、世界全体の需要量が人口増加とともにタイトになることが確実です。このため、自国の水産資源管理の制度を持続可能なものに早急に変えていかねばなりませんが、すでに多くの魚種で危険水域に達しています。SDGs14(海の豊かさを守ろう)の目標からどんどん離れています。
このままでは国内漁獲量が減少して供給量が減り、まず魚の価格がさらに高くなります。そして、これまで価値が低いとされてきた小さな魚でも価格が高くなっていきます。サヨリのように細いサンマが高い値段で販売されていけば魚離れも起きてきます。ただしその原因は、輸入水産物が国際需要の増加による価格上昇とは状況が異なり、わが国の場合は資源管理制度の不備がもたらす自滅です。
政府は魚の資源を回復すべく漁業法改正をはじめとする改革を進めようとしています。本来なら国を挙げて応援すべきなのですが、「魚が減った本当の理由」に関する誤った情報が社会に蔓延しているのが実情です。
このため、本来は科学的根拠に基づく資源管理が実施されれば、最も恩恵を受けるはずの漁業者の方々が反対してしまう事態が起きています。まるで大本営発表のような社会をミスリードする情報を改めていくことが急務です。そのための一助として筆者は発信を続けています。
魚が減ったことを景気に例えると
魚が減り続けている今の状態を企業にたとえるなら、「業績が悪いのは景気が悪いから」と主張しているのとほぼ同じです。もちろん企業業績に景気が影響するのは確かです。しかしながら景気が悪くても、環境の変化に対応して改革して生き残りをかけて必死に努力する。これが生き残っていく企業ではないでしょうか。
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