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日本の漁業が「自滅」に向かっていく根本原因 資源管理制度の不備が原因で魚はもっと高額に…

東洋経済オンライン / 2025年1月23日 9時0分

ギラギラと銀色に光るタチウオは、かつて東シナ海などで大漁に漁獲され、韓国・中国などでも人気の魚です。近年、三陸などで漁獲量が増えているといった報道もあります。確かに増えてはいます。下のグラフをご覧ください。まず右のグラフです。緑の折れ線グラフの宮城県はすごい伸びに見えます。しかしその数量はたったの500トンに過ぎません。

次に左のグラフの赤丸の部分をご覧ください。右のグラフだけでは増えているように見えますが、全体からすると大した数量ではないのです。

さらに下のグラフをご覧ください。上の左のグラフは2003年(H15)からですが、この時期(H15~H19)の1.4~1.8万トンといった数量は、多い数量に見えます。

しかしながら、1950年代からの下のグラフの数量と比べると、ピーク時の1968年の6.8万トンの4分の1程度にすぎないのです。しかも、直近の2023年の全国のタチウオの漁獲量は、5400トンに激減しています。増えたといわれている三陸の分を足してもピークの10分の1以下です。これをもって海水温上昇でタチウオの漁獲量が増えたと言えるのでしょうか。

タチウオには資源管理のための漁獲枠がありません。獲れればお金になるため、漁業者はたくさん獲ろうとします。漁業が仕事なので当たり前です。獲れなくなると、ひものような細いタチウオまで獲ってしまいます。そして最後はほとんどいなくなります。こうした事態は他魚種でも同様ですが、漁業者ではなく、資源管理制度に問題があるのです。

科学的根拠に基づく資源管理が行われていない漁業の末路は同じです。獲りすぎで魚がいなくなってから、海水温上昇や外国などに責任転嫁しても何も解決にならないのです。

どんな魚種が減っているのか

最後に水産資源管理の記事を書いていると、以下のような疑問が寄せられるので回答しておきます。

・どの魚種が減っているのでしょうか?
(回答)上の表でご覧いただくとわかります。10年前(2022/2012)に比べるとほぼ全魚種減っており全滅状態です。マイワシとホタテガイくらいですが、増えている魚種を探すこと自体が困難です。またマイワシは変動が激しいので、過去のデータから数年経つと大きく減り始めます。その時はさらに大変なことになりますが、そう遠くない未来です。

・漁業者が減ったからでは?
(回答)誤りです。実際には資源管理制度の不備で資源量が減り、漁獲量が減って漁業者が減るという悪循環です。漁業者が減って漁獲量が減るという理屈は、沿岸漁業の極々限られた地域ではあるかもしれません。ただし、その数量は全体の漁獲量からすれば、ゼロに近いことでしょう。資源量が同じであれば、減った分は残った漁業者が漁獲できます。資源管理制度が機能しているノルウェーでは漁業者が減っても漁獲量は減少していません。あくまでも漁獲量の増減は、資源量次第なのです。

・消費量が減ったから漁獲量が減っているのでは?
(回答)誤りです。もし価格が高くなって消費が減ったという理由の場合は、資源量が減って漁獲量が減り、その結果で価格が高くなったからではないでしょうか。逆においしい魚が安定した価格で供給されていれば、消費量は減らないのではないでしょうか。どこに問題があるのか? それは水産資源管理制度の不備にあります。

海水温上昇や外国が悪いについてはとても多くのコメントをいただいています。「地球温暖化 科学者が言いたがらない日本の魚の真実」で説明しているように、影響がないとは言いませんが、誤解がとても多いのが現状です。

片野 歩:Fisk Japan CEO

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