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中居騒動で露呈「日本的組織」の本質的な危うさ フジテレビ「事なかれ」批判は他人事ではない

東洋経済オンライン / 2025年1月23日 8時30分

ただ、フジテレビの公式ホームページに記者会見における発言と同じ文章が掲載されているが、「視聴者の皆様をはじめ、関係者の皆様に多大なご迷惑・ご心配をおかけしています」と、世間に対する謝罪の言葉は述べられているものの、被害女性に対する謝罪の言葉はない。

そうなると、自浄作用はなかなか望めないという見通しもおおよそ想像ができる。この局面においても「間柄」を最優先しているからだ。

根本的な問題に触れることを避けた「失敗の本質」

話を『失敗の本質』に戻すと、戸部らは、戦局を変えるほどの大敗北を期した作戦であるにもかかわらず、通常は作戦終了後に開かれる作戦戦訓研究会が開かれなかった事例を引いている。

作戦を指揮した軍の幹部たちは、お互い詮索されることや、責任追及されることを恐れて、根本的な問題に触れることを避けたのである。

「本来ならば、関係者を集めて研究会をやるべきだったが、これを行わなかったのは、突っつけば穴だらけであるし、みな十分に反省していることでもあり、その非を十分に認めているので、いまさら突っついて屍に鞭打つ必要がないと考えたからだった」(吉田俊雄『四人の連合艦隊司令長官』文春文庫)と回顧している。

戸部らは、「ここには対人関係、人的ネットワーク関係に対する配慮が優先し、失敗の経験から積極的に学びとろうとする姿勢の欠如が見られる」と述べている。

また、同書では日本軍の構造的欠陥が戦後、政治やメディア組織に受け継がれたという予見的な記述でしめくくられており、非常に不気味である。

日本軍が特定のパラダイムに固執し、環境変化への適応能力を失った点は、「革新的」といわれる一部政党や報道機関にそのまま継承されているようである。すべての事象を特定の信奉するパラダイムのみで一元的に解釈し、そのパラダイムで説明できない現象をすべて捨象する頑なさは、まさに適応しすぎて特殊化した日本軍を見ているようですらある。(同前)

昭和から令和にかけて、フジ・メディア・ホールディングスのグループ人権方針にあるような「人権尊重」「差別・ハラスメントの禁止」が強く求められるようになった。

けれども、前述のように「間柄」が優越すれば、どのような人権侵害も許容され、差別・パワハラも黙認されるという状況が出現しうるのだ。

これが前回取り上げた「企業などの社会組織が『運命共同体』としての性格を帯びること」(中居騒動でフジが露呈「日本的組織」の根深い問題)とともに、硬直したパラダイムの一翼を担っているのである。

フジテレビの激震が民放各局にも走っているはずなのに、妙に及び腰な印象を受けるのは、おそらく叩けばほこりが出るだけでなく、同種の困難を抱えているからなのかもしれない。

先人たちの失敗と教訓といえば他人事に聞こえるが、人物と時代が変わっただけで本質的な課題がDNAのごとく継承されているように見える。他山の石になるのはまだまだ先の話なのかもしれない。

【もっと読む】中居騒動でフジが露呈「日本的組織」の根深い問題 いかに内部が狂っていても外まで伝わらないワケ では、フジの会見や「第三者的な委員会」のおかしさなどについて、批評家・真鍋厚氏が詳細に解説している。

真鍋 厚:評論家、著述家

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