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金融庁がトヨタ自動車子会社などに業務改善命令 「保険代理店」としての内部統制に重大な欠陥

東洋経済オンライン / 2025年1月24日 19時50分

トヨタ自動車の完全子会社「トヨタモビリティ東京」や中古車販売「グッドスピード」へ業務改善命令を出した金融庁(撮影:梅谷秀司)

金融庁は1月24日、トヨタ自動車の完全子会社で、東京都内に200店舗超の販売店(ディーラー)を展開するトヨタモビリティ東京(東京都港区、佐藤康彦社長)と、東海地方で中古車販売事業を展開するグッドスピード(名古屋市、加藤聡社長)に対して、保険業法に基づく業務改善命令を出した。

【写真】「ガバナンス体制が機能不全」(金融庁幹部)とされたトヨタモビリティ東京

トヨタモビリティ東京では2020年2月、全体の約3割に当たる約70店舗で、2000件を超える車両塗装費用などの保険金水増し請求が発覚。2021年には国土交通省関東運輸局の監査によって、検査した機器の計測値を改ざんするといった不正車検も発覚しており、当時の経営陣らが「謝罪会見」を開いている。

体制整備義務違反を認定

金融庁は保険代理店を兼ねるトヨタモビリティ東京に対し、昨秋から立ち入り検査に入っている。

検査の結果、新たな保険金水増し請求の疑義があったほか、保険の契約者情報のずさんな管理やオンラインストレージを通じた2.3万件にのぼる漏洩など、保険業法に基づく体制整備義務違反も見つかった。

さらに、保険業法が定める「比較推奨販売」ルールにおいても、不適切な事例があった。

トヨタモビリティ東京が、店舗ごとに担当する損保会社を決める「テリトリー制」を敷いて担当損保の商品を集中的に推奨しながら、明確な推奨方針を定めておらず、さらに推奨理由を顧客に一切説明しないなど、ルールを逸脱した販売が多くの店舗で横行していた。

保険契約の見返りに、新車の販売価格を割り引くといった保険業法(300条1項5号)が禁じる特別利益の提供行為については、今回確認できなかった。

トヨタ自動車グループ唯一の直営ディーラーとして、手本となるべきにもかかわらず、保険代理店として「ガバナンス(統治)体制が機能不全」(金融庁幹部)となっている実情を重くみて、行政処分が避けられないと判断した。

一方、グッドスピードをめぐっては、2023年8月に保険金不正請求の疑義が浮上し社内調査委員会を設置。同年10月には、調査した1664件のうち91件で「不適切疑義案件」があったと発表していた。

ただ、調査範囲が限定的だったため、損保各社は追加調査とともに、弁護士など外部の有識者による調査委員会の設置を繰り返し要請していた。

調査内容を改ざん

金融庁の立ち入り検査では、社内調査委のヒアリングにおいて社員が「上司に指示された」と回答していたものを、「上司に指示されたと感じたことがある」など組織的な関与を弱めるような内容に、調査委員長が改ざんしていたことがわかった。

保険代理店としては、名義借りなど架空契約が疑われるような保険の早期解約が全店舗の8割以上で発生していたが、不適切な販売を検知する社内のモニタリングや管理体制が機能していなかった。

さらにその過程で、納車前の段階にもかかわらず、販売代金を先行して売り上げに計上するといった不正会計も発覚。

一連の不祥事による販売の落ち込みや決算修正などの影響で、債務超過に転落すると、ガソリンスタンドなどを運営する宇佐美鉱油がTOB(株式公開買い付け)を実施したことで、宇佐美の完全子会社となり、2024年8月に上場廃止となっていた。

金融庁は両社に対し、経営責任の所在の明確化と併せて、コンプライアンス(法令順守)と顧客保護を重視する健全な組織風土の醸成などに向けた業務改善計画を、2月21日までに提出するよう求めている。

中村 正毅:東洋経済 記者

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