静岡大に現役合格も"3浪で藝大"目指す彼の努力 浪人決意で気づいた「本当に自分が好きなこと」
東洋経済オンライン / 2025年1月26日 7時30分
高校受験では、県内の進学校である島根県立松江北高等学校を受験し、見事合格しました。
家原さんは、学年300人の中で100番程度の成績をキープしつつ、友達ともしっかり遊ぶ生活を送り、高校2年生のときには生徒会長になります。華やかな青春時代にも思えますが、本人の中では、どれも中途半端で、頑張りきれた感覚はなかったそうです。将来進みたい道についても、中学時代から同様に、高校3年生の秋ごろまではイメージできないままでした。
そんな彼が進路を決めたきっかけは、ある不朽の名作を読んだことでした。
「中学時代に読んだ『ライ麦畑でつかまえて』を、高校3年生になってからまた読み返したんです。16歳のホールデンという少年が高校を退学してニューヨークの街を放浪する話なのですが、彼は欺瞞に満ちた社会や、大人に対して鬱屈とした怒りを抱く一方で、子どもなどの純粋な人を愛する人でした。
私は、崖の近くで子どもが遊んでいるときに、彼らが落ちないように捕まえる”キャッチャー”になりたいというホールデンに共感しました。彼の思想に近い学部が教育学部だったので、国公立大学の教育学部を目指すことを決意しました」
ところが進路を設定したのが高校3年生とかなり遅い時期だったこともあり、家原さんは焦って対策を始めます。
「受験を頑張り切れなかった」と当時を振り返る家原さんですが、授業時間に加えて放課後に平均2~3時間、休日に5~6時間の勉強を続けた結果、センター試験では68%を確保。河合塾のセンターリサーチでB判定が出た静岡大学の教育学部に前期試験・後期試験と出願し、前期で無事に合格して進学することが決まりました。
「大学もリサーチしてないし、受験に対する覚悟があったわけではありません。ダメだったらもう1年やろう!くらいの考えでした。美術はまったくやらない3年間でしたし、美大に行く選択もまったく頭になかったです」
現役で合格したものの、再び受験の日々…
現役で国立大学に進学し、受験を終えた家原さん。しかし、思わぬ浪人生活がここから始まることになるとは、まだ彼も予想すらしていませんでした。
静岡大学の教育学部に進学した家原さんは、入学して間もなく、再受験をするかどうかを迷い始めます。その理由は、「大学生活が楽しくなかった」ことにありました。
「私が入ったのは、教育学部の教育実践学専修という分野で、ほとんどの人は小学校の教員になる学部でした。そこで私は、子どもの特性についての授業などを受けたのですが、授業内容に興味を持てず、興味を持って学んでいる周囲の学生との温度差を感じてしまったのです。
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