32年のベテラン老中「松平武元」過労で死去の悲劇 台頭著しい「田沼意次」の時代へと突入する
東洋経済オンライン / 2025年1月26日 8時0分
NHK大河ドラマ「べらぼう」で主役となった、蔦屋重三郎(つたや・じゅうざぶろう)。重三郎は20代前半で吉原大門前に書店を開業し、書籍の販売と出版をスタート。浮世絵師を巧みにプロデュースし、「江戸のメディア王」として名を馳せた。一体、どんな人物だったのか。また、重三郎が活躍したのがどのような時代で、どんな歴史人物と接点があったのかも気になるところだ。江戸時代中期に花開いた町民文化や、時の将軍の徳川家治やその側近らの人間関係とともに、この連載で解説を行っていきたい。連載第4回は、田沼時代に突入する以前に活躍した、松平武元について解説する。
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台頭著しい意次とベテラン老中の関係とは?
NHK大河ドラマ「べらぼう」は大火事から必死に逃げ惑う人々の姿からスタートして、そのインパクトが話題となった。明和9(1772)年2月29日に江戸で起きた「明和の大火」である。目黒行人坂(現在の東京都目黒区)で出火したことから「目黒行人坂大火」とも呼ばれており、老中の田沼意次も被害に遭っている。
大火の3年前、明和6(1769)年に、意次は老中に準ずる「老中格」に昇進。老中並みの権限が与えられると同時に、5000石が加増されて2万5000石となった。さらに官職としても侍従に任じられている。
時の将軍・第10代の徳川家治は、父・家重による「意次を重用せよ」という遺言を守ったといえよう。
「明和の大火」は、「老中格」から「格」がとれて意次が正式に老中となってすぐに起きたものだった。
この大火事によって、神田橋にあった自身の屋敷も焼失することとなった意次だが、その後の活躍も目覚ましかった。
火事から半年後の明和9(1772)年8月には徳川家治の夫人の一周忌法会が行われたほか、翌年には家治の娘の万寿姫が亡くなり、その葬儀が行われたり、前将軍・家重の十三回忌法会が行われたりもした。それらの法事に関わる御用を意次が務めている。
そして安永5(1776)年4月に家治が日光東照宮に社参すると、意次もお供として同行。旗2本、槍25本、弓7張、鉄砲25挺、馬上10騎を率いながら、華々しい行列に加わっている。
意次が前将軍の家重の就任に伴い、本丸に仕えたのが、意次が25歳のときのこと。それから実に約30年の月日が流れた。意次としても「よくここまで出世したものだ」と感慨深いものがあったのではないだろうか。
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